本田、トップ下で躍動し初ゴール チームに落ち着きを与え信頼を勝ち取る

神尾光臣

前線のトライアングルが機能

本田は後半19分に途中交代。今後はさらなるコンディションの向上が求められる 【Getty Images】

 しかしそんな中、本田は少しずつ周囲からの信頼をピッチで勝ち取っていった。左右に動いてパスをもらい、正確なリターンを出して味方も動かす。相手の密集したディフェンスの中で正確なパスを出し、またプレッシャーがなく前が向けそうな場面では、トラップとともに素早く前を向いてパスを出し、展開のスピードを上げる。地味ながらこういったプレーを続けたことでチームは落ち着き、ボールは自然に本田の下へと集まるようになった。

 そしてついに前半28分、前線のトライアングルが狙い通りに機能した。本田とロビーニョは、ペナルティーエリア内で細かくパスをつなぎ合い、その後に右サイドのアンドレア・ポーリへと展開。ポーリはゴール前でDFの背後を取ったパッツィーニへとクロスを送り、パッツィーニはこれをダイレクトボレー。息の合った連係から先制点を奪ったミランは、これで硬さがほぐれる。4分後には右サイドに開いたパッツィーニがクロスを放ち、ロビーニョがダイビングヘッド。2点目を奪った。

 残るは本田である。2点のリードを築いた後、常にパス回しの中にいて試合展開を組み立てていたが、後半早々に自らもゴールを奪ったのだ。後半2分、リッカルド・モントリーボがペナルティーエリア外から強烈なシュートを放つ。これはGKに弾かれるが、ボールはゴール左に構えていた本田の前にこぼれる。本田はこれを逃さず、冷静かつ豪快に蹴り込んだ。

 なお初ゴールを奪った直後にも、本田はビッグチャンスを演出している。ドリブルでじっくりとタメを作った後に、裏のスペースに走り込んだパッツィーニへ正確なパス。あわやアシストも付きそうな場面だったが、パッツィーニのシュートは大きく逸れてしまった。

必要なのはフィジカルコンディションの向上

 結局本田は、後半19分までプレーしてお役御免となり、バルテル・ビルサと交代した。この時、結構なブーイングが飛んだが、それはゴール裏の一階席を埋め尽くしたスペツィアのサポーターによるもの。記者席の横に陣取っていたミランサポーターは、立ち上がって拍手を送っていた。チームがすっきりと勝つ様子を今季はなかなか見られなかった彼らにとって、本田のパフォーマンスは上々に映ったようだ。

 もっとも交代する5分ぐらい前からはミスも増えており、コンディションはまだ上がり切っていないようにも見受けられた。試合後の記者会見でその辺りをタソッティ監督代行に質問したところ、「90分間プレーできるようになるまでにはもう少し時間が必要で、現在もコンディション回復の最中。その状態でプレーを引っ張るとけがにつながることも多い。その意味もあって今日は早めに交代させた」という返事が返ってきた。もちろん今後、本田の状態を判断するのはセードルフ監督ということになるが、フル出場で戦わせるにはあと2、3試合ほど時間が必要になるかもしれない。

 しかしトップ下としての持ち味は、十分見せつけられたのではないだろうか。サッスオロ戦から4日しか経っていないが、この試合で見せたプレーは上々のインパクトを残した。フィジカルコンディションがさらに向上し、よりプレッシャーのキツくなるセリエAのリーグ戦でも当たりに対処できるようになれば、もっと素晴らしい活躍が期待できそうだ。

<了>

2/2ページ

著者プロフィール

1973年9月28日、福岡県生まれ。東京外国語大学外国語イタリア語学科卒。97年の留学中にイタリアサッカーの熱狂に巻き込まれ、その後ミラノで就職先を見つけるも頭の中は常にカルチョという生活を送り、2003年から本格的に取材活動を開始。現在はミラノ近郊のサロンノを拠点とし、セリエA、欧州サッカーをウオッチする。『Footballista』『超ワールドサッカー』『週刊サッカーダイジェスト』等に執筆・寄稿。まれに地元メディアからも仕事を請負い、08年5月にはカターニア地元紙『ラ・シチリア』の依頼でU−23日本代表のトゥーロン合宿を取材した。

新着記事

編集部ピックアップ

コラムランキング

おすすめ記事(Doスポーツ)

記事一覧

新着公式情報

公式情報一覧

日本オリンピック委員会公式サイト

JOC公式アカウント