本田、デビュー戦で早くも放った存在感=ふがいないチームの柱となる可能性も

神尾光臣

本田という歓喜の“波”が到来

ミランでデビューを果たした本田。チームは敗れたが、随所に好パフォーマンスを見せた 【Getty Images】

「圭佑は、これまでにはなかった歓喜の『オンダータ(波)』をチームにもたらしてくれた」

 セリエA・第19節サッスオロ戦を控えた11日、ミランのマッシミリアーノ・アレグリ監督はそう語っていた。実はここには、アレグリ監督のちょっとしたしゃれが隠れている。イタリア語で『H』は発音しないことになっており、HONDAの発音は「オンダ」となる。Ondaとはイタリア語で「波」のこと、つまり「本田という歓喜の“波”が到来した」ということになる。

 ミラノ・マルペンサ空港に200人近くの報道陣が押し寄せたことに始まり、メディア主導で煽られている感のあった本田圭佑の移籍フィーバーだったが、チームには好意的に捉えられているようだ。渡航後初日から体を動かすことを望んだアスリートとしての真摯な姿勢とやる気は、選手や関係者にもおしなべて好印象に映っているという。若手のブライアン・クリスタンテは、「すごく良い選手だ。イタリアのサッカーに慣れたら、きっと僕たちに大きな手を貸してくれるだろう」と期待を物語っていた。

メンバー入りも起用には慎重な見通しだった

 そして本田は、サッスオロ戦の招集メンバーに名を連ねた。注目はイタリアメディアからも大きく注がれていた。試合当日の『コリエレ・デッロ・スポルト』紙は1ページを割き、「本田、ミランストアではすでに記録を樹立」という見出しとともに特集記事を組み、「スタメンではないものの、試合途中からロビーニョに代わっての出場が濃厚」と伝えていた。「練習時間は短いものだったが、ベンチに入れる以上、われわれは当然彼を使うつもりで考えている」と試合前にマリオ・タソッティ助監督も語っていた。

 もっとも、本田のコンディションがどうなのかは気になるところだ。選手の体調などを管理する『ミラン・ラボ』の責任者ダニエレ・トニャッチーニ氏はミラン専属のTV『ミラン・チャンネル』の中で「過去の日本遠征の際のデータを基にした研究から、8時間の時差を取り戻すには8日かかる。本田の来伊は4日だから、12日には時差も取れて万全になっているはずだ」との見解を示していた。たかが時差、と馬鹿にはできない。南米の選手がメンバーのほとんどを占めたインテルが、ウインターブレイク明けの6日に行われたラツィオ戦で、ボロボロの内容を展開した末に敗れたことからも、時差の影響は明らかだ。

 それ以前に、本田はロシアリーグでのレギュラーシーズンを終えてから1カ月以上プレーしていない。「コンディションはトップであるはずがない」とアレグリ監督は記者会見で語っていたし、他ならぬ本田自身が入団記者会見で慎重な見通しを示していた。

まさかの4失点で勝利を求められる展開に

 サッスオロ戦で出場したとしても、チームに慣らすための起用となるに違いなく、起用時間も抑えられそうなことは試合前からも明白だった。そんな中で何ができるか注目されたが、存外にプレー時間が多く与えられることになった。なんとミランが、格下のサッスオロ相手に2点のリードをひっくり返され、4点を取られたからである。

 相手のミスを突き、開始からロビーニョやマリオ・バロテッリが順調に点を重ねたまでは良かった。ところが2点のリードを築いた直後の前半15分、サッスオロのドメニコ・ベラルディのゴールで1点を返されると雰囲気は一変。ミランは相手の勢いに押されルーズボールをことごとく失うと、開幕から脆弱ぶりが問題となっていた守備陣が崩壊。弱冠19歳のイタリアU−21代表は前半終了までにハットトリックを達成、後半3分にはとうとう4点目を決めてしまう。ここまで来ると、“試す”どころの話ではなく、「フィットし切れていない本田を使ってでも勝て」という展開になってしまった。

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著者プロフィール

1973年9月28日、福岡県生まれ。東京外国語大学外国語イタリア語学科卒。97年の留学中にイタリアサッカーの熱狂に巻き込まれ、その後ミラノで就職先を見つけるも頭の中は常にカルチョという生活を送り、2003年から本格的に取材活動を開始。現在はミラノ近郊のサロンノを拠点とし、セリエA、欧州サッカーをウオッチする。『Footballista』『超ワールドサッカー』『週刊サッカーダイジェスト』等に執筆・寄稿。まれに地元メディアからも仕事を請負い、08年5月にはカターニア地元紙『ラ・シチリア』の依頼でU−23日本代表のトゥーロン合宿を取材した。

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