山本隆弘が分析! 全日本の課題と未来=グラチャンバレー男子の序盤戦を語る

構成:田中夕子

グラチャン男子、全日本はここまで3連敗。試合の中で見えた課題などを山本隆弘さんが解説 【坂本清】

 19日に開幕した男子のワールドグランドチャンピオンズカップ2013(グラチャン)。バレーボール全日本男子『龍神NIPPON』はここまで、米国(1−3)、ロシア(0−3)、ブラジル(0−3)と3連敗を喫し、6チーム中最下位となっている。
 今シーズンは苦しい戦いが続く全日本男子だが、世界ランク上位4カ国とアジア王者・イランという強豪が集まる大会の中で、結果はもちろん、その試合内容も問われている。

 今回スポーツナビでは、ここまでの3試合を元日本代表の山本隆弘さんに振り返ってもらい、全日本男子の戦いを分析。課題や今後の展望などを語ってもらった。

勝利のカギは『サーブ』

『攻めのサーブ』とは、ただ速いサーブというわけではない。コースや狙いどころも大事 【坂本清】

 世界のトップチームとの対戦で、日本の課題がハッキリ見えると同時に、どうすれば勝ちパターンにできるか、というヒントも見えました。

 どちらも、カギはサーブです。

 最初から最後まで、全員が攻めの意識でサーブを打てている試合やセットは、どの相手に対しても互角の戦いをしています。その反対に、サーブが消極的で、狙い所も分からず、「ミスをしたらどうしよう」と、ただ入れるだけのサーブを打っているような試合は、一方的に押し切られています。

 攻めのサーブというと清水(邦広)選手や、福澤(達哉)選手、越川(優)選手のようなスピードサーブをイメージするかもしれませんが、そうと限ったわけではありません。
 ジャンプフローターサーブや、7〜8割の力で打つジャンプサーブでも、確実にターゲットとなる人やエリア、コースを狙って打てていれば、それも十分に攻めのサーブ、と言うことができます。

 今大会で日本が対戦する強豪国の選手たちは、ほぼ全員と言っても言い過ぎではないほど、攻めのサーブで勝負してきます。特に、20点以降の終盤に攻めるサーブを打つのは当たり前。狙い通りの場所に打つことのできるタフさと、技術を持っています。

攻めのサーブミスの意味

清水(写真)も大会前、サーブについてはただ強い球を打つだけでなく、いろんなバリエーションを出したいと話していた 【坂本清】

 誤解しないでほしいのは、サーブミスについてです。20点以降で、前述の3選手や石島(雄介)選手のようなビッグサーバーが思い切って勝負に行ったサーブがミスになり、相手の得点となると、会場からは大きなため息が起こります。
 確かに、やみくもに、狙いもなく打ったサーブがミスになれば、「どうしてココでミスをするんだよ」と思うかもしれません。

 でも、そこで攻めずに、安易なサーブを入れて、リベロや、レシーブの得意な選手が簡単にセッターに返し、センターからクイックを決められたとしたらどうなるか。同じ1点ではありますが、「攻めた結果の1点」と、「守りに入って、相手を乗らせてしまった1点」では重みが大きく異なります。

 たとえミスになったとしても、サーブで常に攻めの意識を持ち続けることによって、常に攻めの気持ちを維持することができます。結果的に、スパイクも調子が上がったり、レシーブやブロックでもいいプレーにつながった、ということは決して珍しいことではありません。

 初戦の米国戦や、3戦目のブラジル戦は、『攻めのサーブ』が効果を発し、直接得点につながっただけでなく、相手の攻撃を絞らせ、ブロック得点につなげる場面もありました。
 サーブは、確かにプレッシャーのかかるものではありますが、バレーボールの中で、唯一の個人技でもあります。自分の間合いで、自分がトスをして打つことができる唯一のプレーなのですから、小さく、縮こまって打つのではなく、もっと思い切って勝負してほしい。「自分がここで流れを変えてやろう」とか、「練習で打ちこんできたライン際へ思いきってサーブを打とう」というように、積極的な姿勢で臨んでほしいですね。

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著者プロフィール

1976年神奈川県生まれ。日本大学短期大学部生活文化学科卒業。なぜか栄養士免許を有する。神奈川新聞社でのアルバイトを経て、月刊トレーニングジャーナル編集部に勤務。2004年からフリーとしての活動を開始。高校時代に部活に所属したバレーボールを主に、レスリング、バスケットボール、高校野球なども取材。

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