揺れる日本を襲う難敵オランダの揺さぶり=鍵を握る両サイドのスペースをめぐる攻防
選手によって異なる意見が出てきた日本
オランダの武器である両サイドアタッカーを香川(中央)、長友らは連動した追い込みができるか。 【写真は共同】
ここ最近の本田圭佑のコメントに見られる、一つのキーワードと言えるだろう。10月の欧州遠征で戦ったセルビア戦とベラルーシ戦では、目指すサッカーに対して内容と結果を得ることができなかった。うまくいかなければ、いろいろと手を加えたくなるのが人間の心理というものだ。変わらないことのほうが難しい。柿谷曜一朗の起用をきっかけに、チームは新たなステージを目指し、選手個々にも少しずつ異なる意見が聞かれるようになってきた。
本田によれば「同じ日本人でも育ってきた環境が違うので、サッカーに対する考え方が攻撃においても守備においても違う。そこをぶつけ合っているのはポジティブ。前回のワールドカップ(W杯)ではそれを直前のスイスキャンプで行ったので、少なくとも進歩している」とのこと。
岡田ジャパンはお互いが意見をぶつけ合ったあと、一つの塊となって南アフリカW杯を戦い抜いた。ザックジャパンも、この欧州遠征をきっかけとして、一つの答えにたどり着くことができるか。16日にベルギーのゲンクで対戦するオランダ代表は難敵だ。今はゆらゆらと不安定に揺れるザックジャパンのサッカーを、これでもかと揺さぶってくる特徴を持つ。
サイドからの強力な攻撃が特徴
そして、特筆すべきはオフサイドの数だ。予選10試合で喫したオランダのオフサイドの総数は46回と、次点のイタリアの33回を大きく突き放す。無論、オフサイドが多いこと自体は良いことではないが、それだけ相手のディフェンスラインの裏を突くチャレンジが活発であることの裏返しでもある。個々のオフサイド回数を見ると、レンスの13回を筆頭に、ファン・ペルシの11回、ルシアーノ・ナルシン(PSV)の6回、ロッベンの5回と続く。8月14日のウルグアイ戦(2−4)で引き裂かれた日本のディフェンスラインが、オランダの攻撃陣によって再び窮地に立たされるのは想像に難くない。
また、このオランダ攻撃陣の個の力は、予選10試合をわずか5失点に抑えた守備のパフォーマンスにも影響を与える。つまり、個の力で攻撃を完結できる能力があるため、全体のポジションを大きく崩す必要がなく、バランスが安定しやすい。
まさにサッカーは攻守一体のスポーツ。そういう意味では、流動性を高めた状態から一つのミスでカウンターを食らいやすいザックジャパンは、攻守の両立における「理想のバランス」を確立できていない。この状態でオランダと真正面から組み合うのはかなりリスクが大きいが、それを過剰に恐れると、「ブレ幅」が大きくなりかねない。
理想のバランスの答えはどこにあるのか。
スペースをいかに小さく削るか
ひとつは、2009年に岡田ジャパンが対戦したオランダとの親善試合だ。日本はボールを回しつつ、積極的にプレスを仕掛けて押し気味に試合をすすめ、前半を0−0で折り返した。しかし、後半の半ば以降、ガタッと運動量が落ちると、立て続けに3失点を喫して0−3で敗れた。相手選手からは「日本は最初から飛ばしすぎていたので、後半にバテるのはわかっていた」というコメントも聞かれた。
そしてもうひとつのサンプルは、10年の南アフリカW杯。第2戦でオランダと対戦した岡田ジャパンは、戦術をがらりと変えて臨んだ。自陣のペナルティーエリアの少し前からハーフウェイライン付近までにコンパクトな守備ブロックを作って待ち構え、オランダにボールを持たせる。そして中に入ってきた縦パスを丁寧に刈り取った。CFのファン・ペルシのプレー機会を減らし、最終的にはウェズレイ・スナイデルのミドルシュートで0−1と敗戦したものの、オランダを大いに困らせた試合だった。
この経験からは、「個の力が強いオランダのスペースをいかに小さく削るか」、という課題が浮かび上がる。09年の試合でプレッシングの強度が落ちた後半に怒とうの失点を喫したように、オランダはスペースを与えると個の力を遺憾なく発揮してくる。