“超新星”堀口恭司がUFCデビュー戦で見せた可能性

長谷川亮

広い射的距離の打撃と試合を覆せる爆発力

UFCデビュー戦をKO勝利で飾った“超新星”堀口(写真は10月の公開練習) 【スポーツナビ】

 ベースとする伝統派空手を武器に爆発的KOを量産、山本“KID”徳郁の愛弟子で“超新星”と呼ばれる修斗世界フェザー級王者・堀口恭司が、現地時間19日(日本時間20日)のUFC(「UFC166」)デビューを勝利で飾った。堀口が「夢の舞台」と語るUFCでの活躍の可能性を、これまでの戦いとデビュー戦から探る。

 堀口が対戦したのはUFCの登竜門番組TUF出身で、11勝8敗の戦績を持つダスティン・ペイグ。11勝のうち3つはKO、8つは一本勝ちと、全ての試合をフィニッシュし決定力を有している。

 ケージの中で向き合うと、165センチの堀口に対しペイグは175センチと両者の身長差が際立つ。堀口は開始間もなくスイングフックを交錯させた後、バックへ付かれスタンド状態のままチョークで襲われ窮地となるが、これを脱出。長くバックから攻められたことで1Rは失ったが、2Rに入ると身長差を感じさせず右フックから繋いだ左フックでダウンを奪い、最後はペイグを小外掛けでテークダウンしパウンドをまとめてTKO勝利を果たした。

 昨年12月の「VTJ 1st」でも173センチのイアン・ラブランドと対戦した堀口だが、右クロスでダウンを奪い、度々ハイキックも見舞うなど身長差を苦にした様子を見せておらず、このあたりは空手で身につけた飛び込みと、通常の選手より大幅に広い射程距離によるところが大きいようだ。165センチの堀口はUFCバンタム級を見渡してもどちらかといえば小さい部類に入るが、そこはそのサイズ差を無効化できる武器がある。

 ペイグ戦では1Rの劣勢を2R一気に逆転しての勝利となったが、この爆発的パワーで試合を覆すことができるのも堀口の魅力の1つ。UFC直前の試合となった石渡伸太郎戦(6月22日「VTJ 2nd」)でも、4Rまで37−39、38−38、37−38とスコアリングでは後れを取ったが、5R開始直後にタックルのフェイントから右フックを決め、そこからラッシュでノックアウト。窮地を跳ねのけ逆に仕留める、ペイグ戦同様に堀口の持ち味がよく出た一戦であった。

今後戦う上で鬼門になりそうなグラウンド

 しかし、試合冒頭でペイグにスルリとバックへ付かれてしまったのは言わずもがな、1R終盤にも小手投げでテークダウンされ、2Rにダウンを奪った後も比較的容易にスイープを許すといった場面が目についたのはたしか。黒帯柔術家ともなればしつこいバックキープでよりフィニッシュに迫ってくるであろうし、テークダウンと抑え込みに優れるレスラーは一度倒されるとなかなか立たせてはもらえない。この日はスイープで下にされてもすぐ立ち上がって逆にペイグをフィニッシュしたが、1度のミスが命取りとなる展開もUFCでは度々確認されている。

 唯一の敗北となった上田将勝戦(2012年1月8日)、さらに井上学戦(2012年7月16日)、石渡戦と、テークダウンに長けそれをしつこく繰り返してくる相手、そこからのグラウンド戦に堀口は苦戦してきた過去がある。UFCでも相手がそうした戦法に徹してきた際鬼門となりそうだが、すでに打撃においてはバンタム級トップ勢にもひけを取らないのでは、と思われるだけに、まずは第2戦・第3戦も勝利し、UFCの先輩ファイター・水垣偉弥に続くランキング入りを期待したい。
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著者プロフィール

1977年、東京都出身。「ゴング格闘技」編集部を経て2005年よりフリーのライターに。格闘技を中心に取材を行い、同年よりスポーツナビにも執筆を開始。そのほか映画関連やコラムの執筆、ドキュメンタリー映画『琉球シネマパラダイス』(2017)『沖縄工芸パラダイス』(2019)の監督も。

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