宮市にとって正念場となる1カ月=「若手の宝庫」から抜け出す可能性

寺沢薫

ケガ人続出で出場のチャンスをつかむ

ケガ人が続出し、出場機会を得ている宮市(写真)。現地メディアの評価はやや辛口なものになっている 【写真:アフロ】

 アーセナルが好調だ。開幕戦でアストン・ビラに金星を献上したものの、その後は9月28日のスウォンジー戦までプレミアリーグは5連勝、現在リーグ単独首位に立っている。そんなチームの中で、宮市亮が出場機会をつかみ始めている。度重なるケガで真価を発揮できなかったウィガンへの期限付き移籍を終え、今夏からアーセナルに復帰した20歳のドリブラーは、今季すでにいくつかの“初めて”を経験した。

 まずは、8月27日のチャンピオンズリーグ(CL)予選プレーオフ、フェネルバフチェ戦(2−0で勝利)に74分から途中出場し、今シーズン公式戦初出場。続いて9月18日のCL第1節、オリンピック・マルセイユ戦の終了間際に出場し、CLにも初出場。4日後にはエミレーツ・スタジアムにストーク・シティを迎えた一戦で73分からピッチに入り、念願だったアーセナルでのプレミアリーグ初出場を果たした。さらに3日後の25日には、キャピタルワン・カップのウェストブロムウィッチ戦に先発出場。初めてアーセナルのシャツを着て、公式戦のスターティングメンバーに選ばれた。

 アーセン・ベンゲル監督が宮市を使うようになった理由は明白だ。それはケガ人の続出である。そもそも、プレミアデビューのストーク戦も、元々はベンチ外だった。しかし、セオ・ウォルコットがウォームアップの時点で腹部の痛みを訴えて出場を回避し、急きょ宮市がベンチに入り、途中出場が実現した。そのウォルコットは結局、手術を受けて10月末頃まで復帰できない。さらに、8月の時点でアレックス・オックスレイド=チェンバレン(ひざ)とルカス・ポドルスキ(ハムストリング)が長期離脱を強いられ、サンティ・カソルラ(足首)や、元々負傷がちなトマシュ・ロシツキー(ハムストリング)もピッチに立てていない。

 4−2−3−1のトップ下は完全にレアル・マドリーからやってきたメスト・エジルの定位置になったが、両サイドは人材不足で、ここ数試合はアーロン・ラムジーやジャック・ウィルシャーといったセントラルMFがサイドに出て先発している。トップチームで元気なウインガーは、宮市と18歳のドイツ人MFセルジュ・グナブリーの2人しかいないのだ。

現地メディアの評価はやや辛口

 こうして出場機会を得ている宮市だが、フェネルバフチェ戦、ストーク戦、マルセイユ戦の3試合に関しては出場時間が短く、現地で目立った評価はほとんどついていない。例えば、15分程度の出場だったストーク戦では「インパクトを作るチャンスがほぼなかった」という『スカイスポーツ』、「かろうじてボールに触ったのみ」という『イブニング・スタンダード』に加え、『ザ・サン』など控え選手にも採点を付けたメディアの宮市評はいずれも平均点の「6」。正しい評価ができるほどプレーを見られなかったというのが正直なところだろう。

 それだけに、若手が大量起用されたキャピタルワン・カップが、ここまでで最大のアピールチャンスだった。ウェストブロムウィッチのホームに乗り込んだこの一戦で、宮市はグナブリーや20歳のMFトーマス・アイスフェルド、18歳のMFアイザック・ヘイデンらとともに先発出場し、延長戦を含め120分間のフル出場を果たした。“ヤングガナーズ”は、PK戦の末に次のラウンドへの進出を決めている。試合後、ベンゲル監督は「多くの若手選手を起用したが、彼らは有能な選手というだけでなく、戦える選手だということを示してくれた」「若手たちは、アーセナル流のフットボールをプレーできることを証明してくれた」と若手のプレーに一定の評価を与えた。

 一方で、現地メディアの論調はやや辛口だった。例えば『テレグラフ』のマッチレポートでは、「8年の無冠を終えるのは、ベンゲルの変わらぬ若手への信頼と、それがもたらす選手層なのかもしれない」と前置きしたが、「この日はグナブリー、アイスフェルド、宮市、ヘイデンがチャンスをもらったが、最も期待に応えたのは年長者(27歳)のナチョ・モンレアルだった」とし、目立った若手はいなかったという見解だ。『インデペンデント』も、「ベンゲルはチェルシー戦でも若手を使うか未決定」という見出しで、チェルシーとの対戦が決まった次の4回戦でも若手を先発させるかどうかは「正直、分からない。ケガ人の状態次第だ」というベンゲルのコメントを紹介している。

1/2ページ

著者プロフィール

1984年、東京都生まれ。『ワールドサッカーグラフィック』編集部を経て、株式会社フットメディア(http://www.footmedia.jp/)在籍時にはプレミアリーグなど海外サッカー中継を中心としたテレビ番組制作に携わりながら、ライター、編集者、翻訳者として活動。ライターとしては『Number』『フットボリスタ』『ワールドサッカーキング』などに寄稿する

新着記事

編集部ピックアップ

コラムランキング

おすすめ記事(Doスポーツ)

記事一覧

新着公式情報

公式情報一覧

日本オリンピック委員会公式サイト

JOC公式アカウント