ダービーで完敗、高まる香川起用の声=開幕5試合でいまだピッチに立てず

寺沢薫

ファンからの信頼度は高い

ユナイテッドは1−4でシティに完敗。香川の起用を望む声は日増しに高まっている 【Getty Images】

 エバートンのMFピーナールは、モイズが古巣で重用したテクニシャン。キーオンのような解説者から新聞記者まで、香川の実力を買う批評家は少なくない。実際、体調不良の影響もあって香川本人が「全然ダメでした」と自己評価したレバークーゼン戦も、「ルーニー、ファン・ペルシー、香川のトリオはうまく連係していた」(デイリー・ミラー)、「ようやく先発した香川は監督を失望させなかった。彼は中央でのプレーを好むが、きちんとしたボールタッチ、洗練されたコントロール、良質なパスで、彼はウイングでもうまくプレーした」(マンチェスター・イブニング・ニュース)と、71分間のプレーに対するメディアの評価は悪くなかった。

 ガーナ戦後の香川のコメントを、英国メディアがモイズ批判のように伝えた“誤訳騒動”や、移籍期限ギリギリで降って湧いたアトレティコ・マドリーへの移籍話、古巣ドルトムントのファンが再獲得を望み、ツイッター上で「#FreeShinji(シンジを自由に)」というハッシュタグをはやらせたエピソードは日本でも広く報じられたが、これらは“香川のベンチ”が少なからず議論を呼んでいることの証明だ。

 マンチェスターのファンからも信頼度は高い。地元紙『マンチェスター・イブニング・ニュース』では、サポーターの投票で希望のスタメンを選ぶ「Fans' Starting XI」というプレビューが試合前に載るのだが、ここでも香川はスウォンジーとの開幕戦を除く全試合で“先発”の座を手に入れている。

「香川真司はどこに行った?」

 皮肉なことに、チームが完敗した今回のダービーで、その流れはさらに加速するかもしれない。2点ビハインドでハーフタイムを迎えた際、解説者に転身した元ユナイテッドのFWマイケル・オーウェンは「自分がモイズだったら、ヤングに代えて香川を入れて、ナニをウォームアップさせる」とツイッターでつぶやいた。同じくクラブOBのギャリー・ネビルも、「流れを変えるため、モイズはハーフタイムに動くと思った。バレンシアをサイドバックに下げてナニを投入したり、香川をトップ下に入れてみたり、何かしら手を打つべきだった」と『スカイスポーツ』の解説の中で述べている。さらに、『ガーディアン』の記事では、ファン・ペルシー欠場の穴を埋められず、交代枠を2枚残したまま惨敗したモイズ監督に語りかける形で、こんなフレーズも見られた。

「語り尽くされたテーマだが、香川真司はどこに行った?」

 これらはあくまで“外野”の声。ピッチに立つために必要なのは“現場”の声であることは確かだが、おそらく日本のファンが思っている以上に、香川はイングランドとマンチェスターで待望されている。試合数が多くなる今後、間違いなく出場機会は増える。“外野”の高評価が間違っていないことを証明するチャンスは、遅かれ早かれ必ずやってくる。

<了>

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著者プロフィール

1984年、東京都生まれ。『ワールドサッカーグラフィック』編集部を経て、株式会社フットメディア(http://www.footmedia.jp/)在籍時にはプレミアリーグなど海外サッカー中継を中心としたテレビ番組制作に携わりながら、ライター、編集者、翻訳者として活動。ライターとしては『Number』『フットボリスタ』『ワールドサッカーキング』などに寄稿する

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