女子カーリング、熱い熱い日本代表決定戦=敗れた中部電力の挑戦、勝った道銀の底力
戦いに勝った道銀の強さ
代表権を手にした北海道銀行メンバー。表彰式では笑顔が弾けた 【写真:中西祐介/アフロスポーツ】
トリノ五輪帰りだった当時の小野寺歩と林のチーム青森を日本選手権の予選で撃破し、話題となったのが、リードの吉田知那美とセカンドの小野寺佳歩のいるチーム常呂中学だった。吉田とともにリードを担う苫米地(とまべち)美智子は、ミックスダブルスで日本選手権優勝と世界選手権7位の実績を持つ実力者。夢をかなえるために夫を残して岩手県から単身札幌にやって来た。そんな優れた実績を持つ者たちが結成からの3年間で鍛練した結果の「できる力」なのだろう。
第二には、小野寺の底知れぬ非凡さが大きく作用した。時折、“ちょんぼ”と言えるほどのミスも顔をのぞかせるのだが、最後はゲームをまとめてしまう。よく観察すると34歳のスキップの老かいさが浮かび上がる。中部電力の戦術を深く理解した上で、それを封じる策に長けていた。ときに相手にリスキーなショットを打たせるように仕向け、ミスを誘発していた。ミスにも動じぬ心を持ち、相手を自分のペースにからめ取って行く。“小笠原マジック”とでも言うべき強さだろうか。
トリノ、バンクーバー両五輪に出場した金村(旧姓・目黒)萌絵さんは「ストーンをハウスの前に配置して相手にフリーズをしにくくするなど、巧みな戦術が随所に見られました」と話し、男子代表になったSC軽井沢の山口剛史は「何度も練習試合をしましたが、精神的に強いです」と、舌を巻いていた。
そこにはどうやら4歳の息子を持つ母親としての強さもある。「出産を経て肝が据わって来たなと思います。怖いものがなくなって、ミスしても次と思えるし。勝とうが負けようがそれは結果であって、挑戦する事の方が大事じゃないかなって」と実感する小笠原には、トリノ五輪までと違う、揺るぎないものが備わったのである。
最終予選へ「彼女たちの分まで、必ず勝たなければ」
実力者が力を合わせて作り上げたチーム。仲間の思いも乗せて、五輪出場権を取りに行く 【写真は共同】
また、道銀として初めて日本代表を担う経験不足は、すぐに思い付く不安要素ではある。だが、少なくとも小笠原と船山には豊富な経験がある。若手を引っ張ることでクリアできないはずはない。
激戦の代表決定戦を勝ち抜いたことで、ラテン語で「より強く」を意味するフォルティウスはいまや日本の女子カーラーのすべての思いを背負って戦うチームとなった。それらを受け止めることは必ずや力となり、ソチへの困難な道のりも切り開いて行ける。
会見の終盤、小笠原はこんな決意の言葉を語った。
「中部電力がいたからこそ、日本の女子がオリンピックの最終予選に出場でき、その先にオリンピックがある。だから彼女たちの分まで、必ず勝たなければいけない。最終予選で恥ずかしい試合をしたら、日本が負けてしまうことになります。(決定戦を戦った)LS北見と札幌国際大もそうだし、決定戦に残れなかった多くの仲間の思いも全部私たちは背負ってプレーしなければいけないと思います」
<了>