女子カーリング、熱い熱い日本代表決定戦=敗れた中部電力の挑戦、勝った道銀の底力
五輪最終予選の代表権を逃し、涙を浮かべる市川(左から2人目)、藤澤(同1人目)ら中部電力メンバー 【写真:中西祐介/アフロスポーツ】
若き女王・中部電力と北海道銀行の決戦
エンジンの掛かりがいつもより遅いなという印象は、「最後には地力を出して追い上げて来るはず」という妥当な予想にいつしか疑問符を点灯させ、気が付けばソチ五輪への道が絶たれてしまっていた。サードの市川美余主将は敗戦決定直後に旧知の仲という小笠原の元に向かい、笑顔で抱き合って「私たちの分まで頑張って」と祝福したものの、24歳の瞳からはすぐに悔し涙があふれ出した。スキップの藤沢五月も、リードの清水絵美もセカンドの松村千秋もしかり。その姿はあまりに痛々しかった。
昨年11月のパシフィック・アジア選手権(PACC)で2位に入って今年3月の世界選手権に出場。ソチ一発出場とはならない7位だったが世界最終予選の出場権を確保し、五輪への夢をつないだのはほかならぬ中部電力だった。前回の10年バンクーバー五輪以降、環太平洋地区で中国と韓国が勢力を拡大する中、この2カ国に必至に食らい付いて来た。PACCを2位通過した結果自体が大きな仕事だった。
「だから私たちがソチに行く」。挑戦権をほかのチームに渡すつもりなどさらさらない強い意欲で臨んだ今大会だったから、現実を受け入れるのにどれだけの時間を要することだろうか。敗戦後の会見で、カメラの前に立った藤沢と市川は大粒の涙で両目を腫らした。市川は嗚咽(おえつ)とともにこう語った。
若さ、そして、チャンピオン故の追われる立場が中部電力を追い詰めていた。小笠原は「彼女たちは私たち以上に相当なプレッシャーで臨んでいたはず」と、その気持ちをおもんぱかった。
本来の力を取り戻しそうな場面は何度もあった。予選最後の道銀戦では、スキップの藤沢五月がレイズ(前にあるストーンを玉突き)して、込み入ったハウス中心から相手のストーンだけをダブルテイクアウト(敵のストーンを2つ同時にアウトにするプレー)するというスーパーショットも決めて快勝。一気にリズムを取り戻すかに見えたが、結果的には勝ち切ることができなかった。
中部電力が持ち込んだ世界の潮流
前回五輪後の女子カーリングを引っ張った若き女王・中部電力。道銀と熱い代表決定戦を戦った 【写真:中西祐介/アフロスポーツ】
中部電力はそこに着目し、ソチ五輪切符を絶対に取りに行くという覚悟の下で結成されたチームだった。結成最初のシーズンに初出場した10年3月の日本選手権でいきなり3位に入る。そのとき印象に残ったのは、表彰台という結果以上に、その攻撃的スタイルだった。ドローショット(盤面にとどまるほどの弱いウエートのショット)で大量得点を狙う選択にトライしていた。世界を目指すという明確な意思表示だった。昨季には男子並みのパワーと戦術を意味する“マンリー・カーリング”というキャッチフレーズも掲げるまでに成長していた。