ゲイまで……深刻化するドーピング問題=違反選手に欠如するフェアプレー精神
トップ選手の相次ぐ薬物違反に陸上界が震撼
タイソン・ゲイ(写真)の薬物使用のニュースは陸上界を大きく震撼させた。深刻化するドーピング問題の実態とは? 【Getty Images】
『ブラック・サンデー』
7月14日は陸上界にとって悪夢のような日となった。
米国のエース、タイソン・ゲイは、5月16日に米国反ドーピング機関(以下、USADA)による競技会外の抜き打ち検査で摂取した検体から禁止薬物が検出された。使用した薬物の詳細に関しては明らかになっていないが、米スポーツ誌「スポーツイラストレイテッド」によると、針治療やカイロプラクティックなどを施術する医師から「アンチエージング(抗加齢)」の治療も受け、そこで何らかのホルモン剤が使用されたのではないかとされている。しかし治療を受けたのは昨年とあり、今になって陽性反応が出ていることに首をかしげる声もある。本人もUSADAも使用された禁止薬物の公表を控えており、真相は分からない。
関係者や家族によると、ゲイ自身のショックは大きく、憔悴(しょうすい)し切っているとのこと。「故意ではない」「信頼していた人に裏切られた」という趣旨のコメントを発表している。
「故意ではない」としているが、いかなる理由であれ、自分の体内にどのような物質が入り、どう作用しているかは本人も重々承知しているだろう。
クリーンなイメージが崩壊
USADAは今後B検体を検査し、処分を決定する。過去の例を見ると、捜査に積極的に協力した場合、処分が軽減されることもある。本人は「いかなる処分も受ける」と真摯(しんし)な姿勢を見せているが、陸上界への影響、また陸上のイメージを大きく落とした行為に対しても厳正な処分が求められる。使用した薬物によっては2年以上の処分が下される可能性もある。また国際オリンピック委員会(以下、IOC)が定める「6カ月以上の資格停止処分を受けた選手は、次の五輪に出場できない」という「大阪ルール(07年8月に大阪市で開かれた理事会で決定されたルール)」を世界反ドーピング機関(以下、WADA)や国際陸連も認めれば、16年のリオデジャネイロ五輪出場の道も断たれる可能性が高い。
(※1)USADAが北京五輪前に五輪候補の12選手を3週間の間、尿検査と血液検査を6〜8回行った。