ゲイまで……深刻化するドーピング問題=違反選手に欠如するフェアプレー精神
「ばれなければラッキー」
米国女子400メートルでロンドン五銅メダルのディーディー・トロッターは、反ドーピング団体「Test me, I’m clean」(http://www.testmeimclean.org)を作り、活動している。
「ドーピングは多くの選手や関係者の人生を狂わす。ドーピングした選手のせいでメダルを逃した選手だけではなく、9位で決勝進出できなかった選手、代表に選ばれなかった選手……皆、それぞれ悔しい思いを感じながら生きていかなきゃならない。絶対にダメ」と熱く語る。
スペアモンの言うように、「ばれなければラッキー」という考えの選手や関係者は年々増加する一方に見える。
各国でまん延 止める術はあるのか
10年のアジア大会、翌年の英連邦大会ではインド女子選手の活躍が目を引いたが、その後、大量の違反者が出た。ウクライナ人コーチが彼らの薬物を提供したとされている。20年の五輪招致で東京、マドリードと争っているトルコも、スポーツ界にドーピングがまん延している。ロンドン五輪の女子1500メートル金メダルのアスリ・チャクル・アルプテキンは2度目のドーピングで告発されているほか、6月に国際陸連が行ったドーピング検査で同国の30選手の検体が陽性反応を示したと報じられている。ここまで大人数だと、選手が自ら手を出したのではなく、コーチや関係者などが絡む組織的なものとしか考えられない。
日本の陸上界でもマラソンの吉田香織(アミノバイタルAC)がEPOの使用で1年間の出場停止処分を受けているように、ドーピング問題は対岸の火事ではなくなってきている。
現在、国際陸連の定める規定では、ドーピング(薬物使用)違反の初犯は2年間、2度目で永久資格停止処分が下されている。これは世界反ドーピング委員会(WADA)の規定に沿うものだ。05年に米国陸連が「ステロイド使用に対しては、初犯から永久失格を」という提案があったものの、WADAと足並みをあわせるために実行には至らなかった。
国際陸連や各国の反ドーピング機関は、検査の頻度や精度を上げてはいるが、それでクリーン化が進むというような簡単な問題ではない。
現状ルールの初犯2年というのは、十分なペナルティーにはなっていない。反省の色もなく、再び禁止薬物に手を出す選手が少なくない。努力を重ね、フェアに戦っている選手には不公平な状況だ。処分期間を初犯3、4年に伸ばすとともに、ドーピング使用が疑われる期間の記録や結果の抹消、獲得した賞金や出場料の返還、関係者の処分なども明文化、規則化する必要があるのではないだろうか。
<了>