福西崇史氏が解説するボランチの理想像
強豪国の舵取りに学ぶ世界での戦い方
ブラジル(黄色)のダブルボランチ、パウリーニョ(左)とグスタボ(右)はコンフェデ杯優勝に大きく貢献した
ブラジル(黄色)のダブルボランチ、パウリーニョ(左)とグスタボ(右)はコンフェデ杯優勝に大きく貢献した【写真:MEXSPORT/アフロ】

「コンフェデレーションズカップ(コンフェデ杯)を見て感じたのは、強い国には必ずいいボランチがいるということ。このポジションにどんな選手を置いているかで、その国がやりたいサッカーも見えてきますし、チームが機能するかどうかのキーマンにもなっていたと思います」


 こう語るのは、コンフェデ杯を解説者として取材した元日本代表MFの福西崇史氏だ。ブラジルの優勝に終わったコンフェデ杯は、「舵取り(かじとり)」を語源に持つ、このポジションの重要性をあらためて示すものとなった。ブラジルのパウリーニョ、ルイス・グスタボ、スペインのシャビ、ブスケツ、イタリアのピルロ、デ・ロッシ……。どこの国もボランチが攻守両面でチームを支えていた。


 福西氏は現役時代、主にボランチとして活躍していた。解説者として試合全体を見ながらも、ボランチの動きにも鋭く目を光らせている。「ボランチの専門家」である福西氏に、強豪国のボランチがどのような仕事をしているのか、そして日本のボランチが世界レベルで戦うためには何が必要なのかを分析してもらった。

日本戦で際立ったパウリーニョとグスタボ

ブラジルのボランチはセンターバックとの間の危険なエリアを常に
埋めていた
ブラジルのボランチはセンターバックとの間の危険なエリアを常に 埋めていた【ボランチ専門講座】

「ボランチの基本的な仕事というのはディフェンスです。ボランチが中盤でフィルターとなることで守備が安定し、いい攻撃につながります。その点でブラジルのボランチは素晴らしかったですね。パウリーニョとグスタボは決して目立つタイプじゃない。だけど、危険なスペースを常に消していた」


 ブラジルと対戦したコンフェデ杯の開幕戦、日本代表は攻撃のキーマンである本田圭佑や香川真司がほとんど何もできなかった。本田がボールを持ったときにパスコースを探して迷っているシーンや、香川がボールをもらえずに孤立しているシーンは記憶に残っているだろう。これはパウリーニョとグスタボのボランチが良い仕事をしていたからだと福西氏は言う。


「ブラジルのボランチは相手の選択肢を限定することで、相手が自分たちの罠(わな)に入ってくるように仕向けていました。例えば、本田がドリブルしていたとして1人目が中に行かせて、2人目でつぶすというように。また、日本が前線にパスを出そうとするとき、いつも“うざい”ところにポジションをとっていました。日本の選手からすれば、パスを出したくてもボランチが視界にちらつくので出しづらかったことでしょう」

 

 ブラジルのボランチは守備だけが良かったわけではない。前半終了間際、右サイドのダニエウ・アウベスからのクロスを決めたのはパウリーニョ。ペナルティーエリア内からシュートを打った、このゴールはパウリーニョの「遅れて入る動き」がポイントだと福西氏は指摘する。


「パウリーニョは華麗にボールをさばくタイプではありませんが、ペナルティーエリア内への侵入に優れています。日本戦のゴールはFWや2列目の選手が上がることで日本のDFラインが下がり、その後ろにできたスペースに入っていきました。ほかの選手と同じタイミングで上がるのではなく、わざとタイムラグを作ることでフリーになっていました」


 攻撃時に“第3のストライカー”となるパウリーニョに対して、相棒のグスタボは“第3のセンターバック”となる。ブラジルは両サイドバックのダニエウ・アウベスとマルセロがガンガン攻め上がっていくため、攻撃時にはグスタボがDFラインに下がって相手のカウンターに備えていた。ブラジルの選手たちが自由自在にポジションチェンジやオーバーラップを繰り返せたのは、グスタボの存在が大きい。

北健一郎

1982年7月6日生まれ。北海道旭川市出身。日本ジャーナリスト専門学校卒業後、放送作家事務所を経てフリーライターに。2005年から2009年まで『ストライカーDX』編集部に在籍し、2009年3月より独立。現在はサッカー、フットサルを中心に活動中。主な著書に「なぜボランチはムダなパスを出すのか?」「サッカーはミスが9割」(ガイドワークス)などがある。

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