団体復活へ選考見直し、スペシャリストの活躍にも注目=体操NHK杯

日本体操協会:遠藤幸一

個人総合優勝ともうひとつの見どころ

内村(写真)は史上初の5連覇を狙う。NHK杯はそのほか、世界選手権の代表争い、スペシャリストの動向にも注目が集まる 【大塚達也】

 体操のNHK杯が8、9日に代々木第一体育館で開催される。世界選手権(9月30日〜10月6日、ベルギー・アントワープ)の代表選考会も兼ねており、有力選手の動向に注目が集まる。男子個人総合は、ロンドン五輪金メダルの内村航平(コナミ)が史上初の5連覇を狙う。その内村を追いかけるのは、5月の全日本選手権・個人総合2位の加藤凌平(順大)だ。すでに世界選手権代表に決まっている内村に続き、代表権を勝ち取れるか。5月の東日本学生選手権で負傷した影響が気になるが、代表争いを引っ張る存在であることは間違いない。

 そしてもうひとつ、注目しておきたいことがある。種目別で力を発揮するスペシャリストの存在だ。これまでは個人総合優勝を狙うオールラウンダーがクローズアップされてきたが、今大会はこれまでとやや事情が異なる。日本体操界が試みる、新たな可能性について説明しておこう。

得意種目を伸ばせば種目別選考につながる

オールラウンダーの王者・内村といえども種目別で勝つことは年々難しくなっている 【日本体操協会】

 ロンドン五輪最大の目標に掲げていた団体で金メダルを獲得できなかった。アテネ五輪以降、どうしても中国の壁を乗り越えられずにいる。そこで日本体操協会は昨年、大反省会を開き、スペシャリストの起用について、新たな取り組みに着手することになった。

 従来から日本体操協会は個人総合を重視し、代表選考の柱にしてきた。五輪の団体総合予選は5−4−3制(5名のエントリー選手の中から各種目4名が演技し、その上位3名の得点が団体の得点となる方式)で、団体決勝は5−3−3制(5名のエントリー選手の中から各種目3名が演技し、そのすべての得点が団体の得点となる方式)で行われる。そうなると当然、スペシャリストをうまく組み合わせて戦った方がチーム力を効率的に向上させることができる。ただし、もしもメンバーの誰かが負傷したり、調子を落とすと、スペシャリストが多いチームほどマイナスダメージが大きくなるという懸念点がある。日本はその危機管理と、体操本来の伝統を重んじてきた。

 表は世界王者・内村のロンドン五輪個人総合のDスコアと、各年の世界大会の種目別最高Dスコアを示したものである。見て分かる通り、内村といえども、種目別で勝つのは簡単ではない。個人総合と種目別の二兎を追うことは年々厳しさを増している。

 こうした状況下、世界選手権の日本代表選考は、今までと異なる新しい方法を試みることにした。これまでは全日本個人選手権を2次予選とし、NHK杯を代表決定の場に設定していたが、今回はさらに6月末に開催される全日本種目別選手権を選考大会として追加した。

 それには理由がある。今年の世界選手権は4年に一度、団体総合のない個人総合と種目別のみで開催される大会であり、種目別選手の選考方法を大胆に試せるからだ。NHK杯での代表決定は男女とも各1名。全種目の競技力を満遍なくアップさせるより、得意種目の競技力を上げて戦った方が、個人総合枠だけでなく、その先にある種目別選考での代表入りの可能性は高くなる。

 NHK杯では個人総合優勝の行方もさることながら、種目別での選手の活躍に注目してみるのも面白いだろう。

<了>
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著者プロフィール

1961年東京生まれ。日本体操協会常務理事・総務委員長。体操の金メダリストである父親を持つものの、小学、中学はサッカーに明け暮れていた。高校で体操に転身。国際ルールのイラストレーターとして世界中の体操関係者にその名を知られている。

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