団体復活へ選考見直し、スペシャリストの活躍にも注目=体操NHK杯
個人総合優勝ともうひとつの見どころ
内村(写真)は史上初の5連覇を狙う。NHK杯はそのほか、世界選手権の代表争い、スペシャリストの動向にも注目が集まる 【大塚達也】
そしてもうひとつ、注目しておきたいことがある。種目別で力を発揮するスペシャリストの存在だ。これまでは個人総合優勝を狙うオールラウンダーがクローズアップされてきたが、今大会はこれまでとやや事情が異なる。日本体操界が試みる、新たな可能性について説明しておこう。
得意種目を伸ばせば種目別選考につながる
オールラウンダーの王者・内村といえども種目別で勝つことは年々難しくなっている 【日本体操協会】
従来から日本体操協会は個人総合を重視し、代表選考の柱にしてきた。五輪の団体総合予選は5−4−3制(5名のエントリー選手の中から各種目4名が演技し、その上位3名の得点が団体の得点となる方式)で、団体決勝は5−3−3制(5名のエントリー選手の中から各種目3名が演技し、そのすべての得点が団体の得点となる方式)で行われる。そうなると当然、スペシャリストをうまく組み合わせて戦った方がチーム力を効率的に向上させることができる。ただし、もしもメンバーの誰かが負傷したり、調子を落とすと、スペシャリストが多いチームほどマイナスダメージが大きくなるという懸念点がある。日本はその危機管理と、体操本来の伝統を重んじてきた。
表は世界王者・内村のロンドン五輪個人総合のDスコアと、各年の世界大会の種目別最高Dスコアを示したものである。見て分かる通り、内村といえども、種目別で勝つのは簡単ではない。個人総合と種目別の二兎を追うことは年々厳しさを増している。
こうした状況下、世界選手権の日本代表選考は、今までと異なる新しい方法を試みることにした。これまでは全日本個人選手権を2次予選とし、NHK杯を代表決定の場に設定していたが、今回はさらに6月末に開催される全日本種目別選手権を選考大会として追加した。
それには理由がある。今年の世界選手権は4年に一度、団体総合のない個人総合と種目別のみで開催される大会であり、種目別選手の選考方法を大胆に試せるからだ。NHK杯での代表決定は男女とも各1名。全種目の競技力を満遍なくアップさせるより、得意種目の競技力を上げて戦った方が、個人総合枠だけでなく、その先にある種目別選考での代表入りの可能性は高くなる。
NHK杯では個人総合優勝の行方もさることながら、種目別での選手の活躍に注目してみるのも面白いだろう。
<了>
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