朝日健太郎が語るビーチバレーの醍醐味=“自分自身をデザインできる”魅力とは
ビーチバレー引退後、インドアも見るようになったと朝日氏。ビーチ、インドアともにまだ良くなる部分はあると語る 【写真は共同】
そんな中、今大会で注目を浴びたのは、昨シーズンからビーチ転向を表明した元全日本の上場雄也(フリー)、今シーズンから転向した元JTサンダーズの直弘龍治(グランビーズ広島)、元つくばユナイテッドの小川将司(フリー)ら、インドアバレーから転向した大型選手たちだった。
日本のビーチバレーは、新しいスターの誕生を待っている。そこで、昨季を最後に引退し、ビーチバレー界の顔としてけん引してきた朝日健太郎さんに、ビーチバレーの競技性、魅力をうかがった。インドアバレー、ビーチバレーの両競技でトップレベルを歩んできた朝日さんが考えるビーチバレー普及のカギとは──。
インドアとビーチ、それぞれの魅力の融合を
例えば、応援1つとってもそうです。V・プレミアリーグチームの応援のシンセサイザーは、僕が現役のころから変わっていないチームもいくつかありました。それはそれで歴史があってファンの皆さんにはなじみ深いでしょうが、バレーボールに限らず、スポーツ観戦のスタイルは、転換期に差しかかっていると思います。
拍手をしたり、スティックバルーンをたたいたりする今までの応援よりも、スポーツ観戦の良さは、やっぱり目の前のプレーに熱狂できるということ。会場にいるお客さんが立ち上がって騒げるような雰囲気づくり、お客さんあっての会場づくりが、競技の魅力を引き出すために必要なのではないでしょうか。
そんな中で、男子の堺ブレイザーズの浪速節の応援は、お客さんを盛り上げ、笑いに引き込んでいました! FC東京のサポーターの皆さんが大きな声で応援歌を歌い、チームとの一体感を醸(かも)し出す姿は熱い思いが伝わってきました。
ビーチバレーも競技の魅力を引き出すために、いろいろトライしています。一番の良さは、お客さんと選手の距離が近いこと。試合後に選手がサインをしたり、一緒に写真を撮ったりする時間をきっちりと設けて、会場に来たお客さんは選手たちと気軽に触れ合うことができます。
選手たちは、お客さんに喜んでもらうことを意識して、試合の合間であってもファンサービスに取り組んでいます。客席も、砂をかぶれるほど近いですし、表彰式の後は、入賞選手とハイタッチもできます。お客さんとの接点が多いというのは、ビーチバレーの会場づくりにおける特長ですね。
そして、初めて会場に来た方が一番に驚かれるのは、試合中でも会場に音楽が流れているところです。ボールデッドやタイムアウト、セット間、常にノリのいい音楽が聞こえてくる。自然環境の中で音楽のリズムに合わせて、スポーツを見るという開放感とグルーヴ感は、お祭りに近いものがあります。欧米で高い人気を得ている理由はそこにあり、ビーチバレーの大きな魅力です。
そんなビーチバレーとインドアバレーのそれぞれの魅力を融合させていくことは、同じバレーボールという競技の本質を知ってもらう1つの手段になると思います。かなうことなら、インドアバレーとビーチバレーを同じ場所で開催するのも良いと思います。両方の競技の魅力を再認識できますし、きっと相乗効果につながるはずです。