歴史に終止符を打つファーガソンの引退劇=“忘れ形見”香川にできる恩返しとは
香川が証明する恩師の“目利き”
「自分自身を変えないことが大切だ。新しい監督が自分を変えようとしているのを何度も目にしたことがあるだろう。だが、監督の本質は自分自身を変えることではない。引き継いだものに変化を加えるのが仕事だ。チーム構成やそのクラブの哲学を自分色に染めていくこと。決して、自分が変わるものではない」
来季は新しい監督が、新しいメソッドでクラブを率いる。それはつまり、2年目を迎える香川真司を取り巻く状況にも変化が生まれるという意味だ。
2年間にわたるスカウティングの末、香川をドルトムントから引き抜いてきたのは他ならぬファーガソンだ。香川にとって彼は、イングランドで最大の理解者と言っていい。けがに泣かされたファーストシーズンだったが、終盤の4月、優勝に向けたラストスパートの時期に、香川は指揮官の信頼を完全に勝ち取った。自身を買ってくれる恩師がいなくなる来シーズンは、本当の意味で勝負の2年目だ。
結果論だが、ファーガソンが最後のシーズンに獲得した選手である香川は、名将にとって最後の愛弟子であり、“忘れ形見”のような存在になる。同じ夏に加入したロビン・ファン・ペルシーはすでに名声を確立した選手だったが、まだ24歳の香川はユナイテッドでの成長を見込まれて加入した選手だ。ファーガソンは常々、「2年目のシンジはもっと良くなる」と語ってきた。来シーズンの香川には、恩師の“目利き”が正しかったことを証明してほしい。それが第一線を退く名将に対する、何よりの恩返しになるはずだ。
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