歴史に終止符を打つファーガソンの引退劇=“忘れ形見”香川にできる恩返しとは

寺沢薫

「彼こそクラブの象徴だ」

ファーガソン監督とともに20年以上を過ごしたギグスは、「彼こそクラブの象徴だ」と語った 【写真:Action Images/アフロ】

 今季のプレミアリーグ優勝を含め、獲得したタイトルは実に30を超える。1986年11月から26年6カ月という在任期間は、名将サー・マット・バスビー(編注:1945年から23年に渡りユナイテッドを率いた)を超えるクラブ歴代最長任期。プレミアリーグ808試合を指揮し、戦績は527勝167分114敗。527勝は、2位のアーセン・ベンゲル監督(366勝)をはるかにしのぐ最多記録だ。公式戦通算では、1498試合を率いて894勝337分け267敗。ラストゲームとなる今季最終節、ウェストブロムウィッチ戦は記念すべき1500試合目となる。今週末の1499試合目、スウォンジー戦がオールド・トラッフォードでのラストゲームになるが、この試合後にリーグトロフィーとメダルの授与式が行われ、翌日にはマンチェスターの街で優勝パレードが開催される。おそらく、優勝以上にファーガソンの“お別れ会”として大々的に盛り上がることになるだろう。

 指導者としてのスタンスは、徹底した管理主義。選手補強からスタッフの雇用、メディアの取材規制から、選手の車の運転に関する制限まで、クラブのすべてを完全に掌握した。“長寿”の秘訣については、20年以上をともに過ごし、同じ数のリーグタイトルを獲得してきたライアン・ギグスに聞くのがいい。
「食欲よりもフットボールの人。監督は毎朝、誰よりも早く練習場にやって来る。あの人の情熱は素晴らしいし、それがクラブ全体に浸透している。彼こそクラブの象徴だ。監督は前進をやめない人で、常に新しい血をチームに導入するんだ」

 名将だけに、エピソードには事欠かない。8日朝の引退発表直後から、様々なメディアで、かつての教え子や積年のライバルたちからの賛辞が、とても読み切れないほど並んでいる。さらには、華々しいキャリアを振り返る懐かしい写真たち、26年間で成し遂げてきた偉業の数々、ファンを楽しませた名言・迷言、短気で知られる彼の「ヘアドライヤー・ハイライト」なる記事まで、趣向を凝らした特集記事が次々と掲載されている。そしてもちろん、後任人事に関する報道も数多い。

後任候補の筆頭はモイーズ

 同じく今季限りでクラブを去るチーフ・エグゼクティブのデイビッド・ギルは、後任に関して「日時は言えないが、比較的すぐに発表することになる」と述べた。そして8日午後の時点で、後継者はエバートンのデイビッド・モイーズ監督で決まり、というのが英国全メディアの共通理解だ。ファーガソンと同じグラスゴー出身の50歳は、1999年にファーガソンのアシスタント候補になったこともあり、ファーガソンがかねてから評価してきた人材だ。『タイムズ』や『ガーディアン』の両紙は、8日夜にモイーズとエバートンのビル・ケンライト会長が会談を行ったとし、「今後24時間以内に、クラブがモイーズ任命を発表する」とまで伝えている。11年を過ごしたエバートンとの契約が今シーズンで満了になるというタイミングの良さも手伝って、各ブックメーカーのオッズを見ても、モイーズはダントツで後継者レースの“フロントランナー”だ。(現地時間8日午後にはモイーズ監督が就任すると英メディアが報じている)

 しかし、フットボールファンの一番人気は、ジョゼ・モリーニョである。『ザ・サン』、『インデペンデント』、『テレグラフ』、『ガーディアン』各紙のアンケート結果を見ると、1位モリーニョ、2位モイーズ、3位ユルゲン・クロップが定番である。しかし、まだレアル・マドリーとの契約を残しており、もし退団してもチェルシー復帰が濃厚と言われる“スペシャル・ワン”がマンチェスターにやってくる可能性は低いようだ。『デイリー・メール』の記事では、ユナイテッドの幹部たちがモリーニョを選ばなかったこと、クラブのレジェンドであるボビー・チャールトン氏があまりモリーニョのスタイルを好んでいないことが報じられている。

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著者プロフィール

1984年、東京都生まれ。『ワールドサッカーグラフィック』編集部を経て、株式会社フットメディア(http://www.footmedia.jp/)在籍時にはプレミアリーグなど海外サッカー中継を中心としたテレビ番組制作に携わりながら、ライター、編集者、翻訳者として活動。ライターとしては『Number』『フットボリスタ』『ワールドサッカーキング』などに寄稿する

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