名門再建へ、J2千葉が抱えるジレンマ=「今季こそ」昇格への思いは結実するのか

菊地正典

決定力を強化すべく迎えた2人の外国人

決定力を強化すべく迎えられたケンペス。ここまでリーグ最多の9ゴールを挙げ、得点ランキングのトップに立っている 【写真:松岡健三郎/アフロ】

 2009年にJ2に降格して以来、ジェフユナイテッド千葉は常にJ1昇格候補に挙げられてきた。しかし、J2初年度の10年は4位に終わると、11年は6位。そして12年は自動昇格の2位まで勝ち点3差の5位でプレーオフに進出し、決勝まで進みながら、レギュラーシーズンでは順位が下だった大分トリニータに0−1で敗れ、J1昇格を逃した。日本リーグ時代から1度も2部に降格したことがなかったこの名門クラブが、J2で4シーズン目を迎えることなど、ほとんど予想できる者はいなかっただろう。周りも、そして自分たちも。

 なぜ千葉は昇格できなかったのか。昨季、ガンバ大阪から古巣に復帰し、今季はキャプテンを務めるDF山口智は、その理由を「決定力」とした。「昨季は今年以上に決定的な場面は多かったと思うし、勝ちきる力がなかった」。

 その「決定力」を強化すべく迎えたのが、FWケンペス、FWジャイールというブラジル人アタッカーだった。クロスに対して点で合わせることに長けているケンペス。抜群のテクニックでゴールを含めたチャンスメークを1人でこなせる力をもつジャイール。第13節を終えた段階でケンペスは9ゴールで得点ランクトップに立ち、ジャイールも4ゴールを挙げている。チーム全体の20得点のうち、2人で半数以上の13得点。その数字を見れば、決定力の問題は解消されているかのように思える。

 しかし、成績は5勝6分2敗の6位。スタートダッシュに成功したとはとても言えない成績だ。外国人2人の決定力が結果に結びついていない。昨季はこの時点で7勝3分3敗だった。単純比較できるわけではないが、むしろ昨季より成績が悪くなっている。得点が16から20に増えているにも関わらず。

得点力を取るか、守備力を取るか

 その理由を、GK岡本昌弘は「去年と比べて、守備がハマっていない」と説明する。昨季はたとえばFW藤田祥史(現横浜F.マリノス)が前線から献身的に守備をしていた。しかし、ケンペス、ジャイールは守備を得意とするタイプではない。前線からの守備がおろそかになることにより、チーム全体で連動する守備ができなくなった。連動する守備ができないことにより、高い位置でボールを奪うことができない。プレッシャーがかからないことにより、ラインは下がる。相手に簡単にゴール前へ運ばれる。山口智、DF竹内彬のセンターバックコンビは間違いなくJ2屈指のレベルだが、それでも耐えきれずに失点することが多くなった。事実、得点の一方、失点は7から10へと増加している。さらにボールを奪う位置が低くなることで、攻撃の形を作ることも難しくなった。その結果、勝ちきれず、引き分けに終わる試合が増えているのだ。

 今の状況を端的に言えば、外国人選手が得点できるかどうかに勝敗が左右されている。それはいわゆる“外国人頼み”ではなく、外国人選手が得点でチームに貢献している一方、得点できなければ守備に穴を空ける存在で終わってしまっているということだ。特に現代サッカーでは、攻撃と守備は決して別物ではなく、表裏一体だ。たとえば岡本が「良い守備があって良い攻撃がある」と言うように、高い位置でボールを奪って、相手が守備を整える前に素早く攻撃することでチャンスは作りやすくなる。あるいはボールを保持する、攻撃し続けることによって相手の攻撃の機会を減らせば、おのずと守備機会も減る。だが、今の千葉は得点力を取るか、チーム全体の守備力を取るか、ジレンマを抱えている状態になってしまっている。

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著者プロフィール

福島県出身。埼玉大学卒業後、サッカーモバイルサイトの編集・ライターを経てサッカー専門新聞『EL GOLAZO』の記者として活動し、横浜FC、浦和レッズ、ジェフユナイテッド市原・千葉、横浜F・マリノスの担当記者を歴任。2020年からはフリーランスとして活動している。著書に『浦和レッズ変革の四年 〜サッカー新聞エルゴラッソ浦和番記者が見たミシャレッズの1442日〜』、『トリコロール新時代』(ともにELGOLAZO BOOKS)がある。

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