長谷川穂積は今もなぜ、戦い続けるのか=最強王者への挑戦表明に込めた明確な回答

城島充

長谷川穂積はなぜ戦い続けるのか――その答えは「リゴンドウ」の名を挙げた思いの中にある 【写真は共同】

 WBCバンタム級王座を10度防衛、WBCフェザー級も制した元世界2階級制覇王者の長谷川穗積(真正)が26日、ノンタイトル10回戦を3回TKO勝利で飾ったあと、スーパーバンタム級での3階級制覇に向けて「(ギジェルモ・)リゴンドウとやってみたい。勝てへんと思うほど凄い相手の方が燃えますから」と語った。すでに十分な実績と名声を得ている元王者がベルトを失った今もなぜ、戦い続けるのか――。

 同階級で最強の称号を得ているWBA・WBO統一王者への思いは、その問いへの明確な回答でもある。

“調整試合”の意義

 この夜、スーパーバンタム級リミットを900グラム上回る56.2キロの契約ウエートでリングにあがった長谷川の相手は、タイの国内ランカー。今回は世界挑戦を視野に「実戦感覚をにぶらせないために組んだ試合」だった。

 初回、長谷川がプレスをかけながら鋭いワンツーをのばすと会場はどよめくが、ウィラポン・ソーチャンドラシットも右を強く振ってくる。長谷川はボディワークでその右をはずしていたが、ラウンド終盤に顔面をかすめるように被弾、右目の周囲を少し赤くする。
 2ラウンドも長谷川の動きは固かったが、試合は3ラウンドに終わる。
 距離をつめた長谷川が強引に左の連打で攻め込み、ボディから左フックを叩き込んで最初のダウンを奪う。立ち上がったタイ人にさらに左を連打してダウンを追加、最後はロープ際でラッシュをしかけ、レフリーストップを呼び込んだ。

 日本人ボクサー歴代2位となる10度の王座防衛を重ねたバンタム級時代は繊細な攻防から繰り出すカウンターが真骨頂だったが、フェザー級にあげて以降は好戦的なファイトが多く、被弾するシーンが増えた。今回のジムワークでは接近戦でのコンビネーションやカウンターの練習を積んだというが、長谷川自身が「早く終わらせると練習の成果が出せない。でも、だらだらラウンドを重ねたらお客さんに満足してもらえないだろうという思いもあった」と振り返ったように、足さばきやカウンターの精度を見極めるには、全体的に雑で大味な印象は否めなかった。

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著者プロフィール

関西大学文学部仏文学科卒業。産経新聞社会部で司法キャップなどを歴任、小児医療連載「失われた命」でアップジョン医学記事賞、「武蔵野のローレライ」で文藝春秋Numberスポーツノンフィクション新人賞を受賞、2001年からフリーに。主な著書に卓球界の巨星・荻村伊智朗の生涯を追った『ピンポンさん』(角川文庫)、『拳の漂流』(講談社、ミズノスポーツライター最優秀賞、咲くやこの花賞受賞)、『にいちゃんのランドセル』(講談社)など

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