初々しい勝負度胸、宮記念は◎松山弘平に託した=乗峯栄一の「競馬巴投げ!」

乗峯栄一

まあ、今週の撮影は成功したも同然だ

[写真1]松山弘平の勝負度胸に賭ける! 高松宮記念◎ドリームバレンチノ 【写真:乗峯栄一】

 最近は頑張って馬場開場(いまは午前7時)30分前にはトレセン・ゲートにたどり着いている。30分前なら、そのまま車で中に入れる。乗り運動している馬にぶつからないように注意しないといけないが、車で入ると、そのまま広いトレーニング馬場の下をくぐって、坂路上まで行ける。これを徒歩で行くとなると、大変な時間を要し、だいたい一番乗り(大物馬たちは特に一番乗りが多い)に遅れてしまう。これが大きい。

 今週は久々GIレースだから、GIゼッケンをシャッターで狙えばいいわけだし、いつもヒントをくれるグリーンチャンネル・スタッフもいて、「まあ、これで今週の撮影は成功したも同然だ」と思う。

“二番追い”と“一番追い”の違いを教えましょう

[写真2]武豊とエピセアローム、休み明けを叩いて一変なるか 【写真:乗峯栄一】

 しかしGチャン・スタッフが「今日は一番乗りも何頭かいますが、あと有力どころロードカナロアやマジンプロスパーやツルマルレオンなど、二番追いも多いですよ」と教えてくれる。
 “二番追い”でもいいじゃないか、二番なんだから“一番追い”の次に坂路上がってくるんだろうなどと思ってはいけない。

 いまの栗東では“一人二頭持ち”の持ち乗り(調教と厩務を兼任する)調教助手が主流であり、その人たちが厩舎ごとに7、8頭の隊列を組んでウォーミングアップをし、そのあと追い切るというのが通常態になっている。つまり一厩舎7、8頭の隊列が、朝7時の開場に合わせて追い切る第一陣と、それらの馬を一旦厩舎に戻して、新たに第二陣を組み、またウォーミングアップと追い切りをやるということだ。
 だから“二番追い”は“一番追い”から2時間もあとに行われることになる。ちょうどそれに合わせるように、朝イチ開場前の馬場整地(ハロー掛け)のあとは、9時頃にまた整地が行われる、そのきれいな馬場を目がけて二番追いが行われるわけだ。

今のオレなら疾走中の馬だって、あるいは撮れるんじゃないか?

[写真3]地力は一枚上のダッシャーゴーゴー 【写真:乗峯栄一】

 一番乗りのエピセアローム[写真2・鞍上武豊]、ドリームバレンチノ[写真1・鞍上松山弘平]、ダッシャーゴーゴー[写真3]などの追い切り直後の写真を撮ると、高松宮記念組についてはしばらくすることがない。まだ7時半だ。
「主役のロードカナロアは二番乗りらしいですけど、だいたい何時ごろですかねえ?」と、横のGチャン・ディレクターに聞くと、親切に「主要馬追い切り予定タイム表」をポケットから出して「だいたい9時半ごろですねえ」と教えてくれる。
 えー! まだ2時間もあるのか。
 その間も逍遙馬道などを色んな馬が通るから、手当たり次第に撮影するということは出来るんだけど、チラッと図に乗った考えが浮かんでくる。

[写真4]左の黄色い枠が調教師が陣取る建物、右の赤い枠が撮影塔 【写真:乗峯栄一】

 この坂路ゴール後の坂上地点は、逍遙馬道とも交差していて、個人的には“栗東のサマルカンド(シルクロードの十字路)”などと呼び、ここで写真撮るやつが一番効率がいいんだなどと悦に入っているが、追い切り後を撮影するGチャンネルのTVカメラ以外にプロカメラマンがいないということは、そんなに需要が高くない地点という意味ではないのか?
 馬を止めかかったり、逍遙馬道をゆっくり歩く場所なので素人でも撮影できる。しかしほんとのプロカメラマンというのは追い切り疾走中の馬こそ撮りたいと思っているんじゃないか。ぼく自身、同じ地点で同じ角度から馬を撮るというのも、ちよっと飽きてきたところもある。そしてさらに「今のオレなら疾走中の馬だって、あるいは撮れるんじゃないか?」という天狗の考えが浮かんできたのだ。

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著者プロフィール

 1955年岡山県生まれ。文筆業。92年「奈良林さんのアドバイス」で「小説新潮」新人賞佳作受賞。98年「なにわ忠臣蔵伝説」で朝日新人文学賞受賞。92年より大阪スポニチで競馬コラム連載中で、そのせいで折あらば栗東トレセンに出向いている。著書に「なにわ忠臣蔵伝説」(朝日出版社)「いつかバラの花咲く馬券を」(アールズ出版)等。ブログ「乗峯栄一のトレセン・リポート」

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