本田、長友不在で注目される代役の存在=カナダ戦は日本の幅を広げるきっかけに

西川結城

コンフェデ杯前に出場権を得たい日本

本田(左)と長友を欠く日本は、カナダ戦にどのようなメンバーで挑むのか 【写真:北村大樹/アフロスポーツ】

 この時期の中東は、われわれが彼の地をイメージするような酷暑とは違い、幾分過ごしやすい気候となっている。冬から春にかけた季節とはいえ、気温が30度に達することもあるが、肌にべとつくような湿気はなく、選手たちは汗を流していても不快な思いをすることもないという。昨年11月に行われた同じワールドカップ(W杯)・アジア最終予選のオマーン戦では、選手たちは口々に「息ができないほどの暑苦しさだった」と嘆いていたが、今回はそんな苦悶(くもん)にさらされることはなさそうだ。

 日本代表のブラジル行きをかけた戦いが、いよいよ最終局面を迎えようとしている。日程的には6月にも予選2試合(ホームのオーストラリア戦とアウエーのイラク戦)を残しているが、日本はスタートダッシュに成功した結果、今月26日に行われるアウエーでのヨルダン戦に勝てば、自力で2014年W杯ブラジル大会への切符を獲得することができる状況にある。

 6月の予選2試合後には、そのW杯のプレ大会でもあるFIFAコンフェデレーションズカップへの参戦も決まっている。ブラジルやイタリアといった列強と“ガチンコ対決”ができる好舞台に向けて、万全の状態で臨むためにも、その直前にストレスやプレッシャーのかかる状態で予選を戦うことはできれば避けたい。このタイミングで是が非でも出場権を手繰り寄せたい、大きな理由の一つだと言える。

主力不在で注目集まるカナダ戦のメンバー

 今回、日本は本番となるヨルダン戦を前に、22日(日本時間23日深夜)に合宿地・ドーハ(カタール)でカナダと強化試合を行う。

 ドーハはアルベルト・ザッケローニ監督が就任後、初めての国際大会となった11年のアジアカップが行われた場所。その大会でザックジャパンが優勝したことからも縁のある地であり、日本を発つ前に指揮官も「アジアカップ以降も中東で試合を行う際はドーハで直前の合宿を行ってきた。トレーニングのハード面もしっかりしており、われわれが必要とするものすべてがそろっている」と語っている。満足のいく環境面に、この時期の温暖な気候も相まって、チームはカタール入りしてからも足並み乱れることなく普段通りのトレーニングを進められている。

 ただし、周知の通り、今回の遠征メンバーには2人の看板選手が名を連ねていない。DF長友佑都(インテル/イタリア)、そしてMF本田圭佑(CSKAモスクワ/ロシア)である。所属クラブの試合から戦線離脱している彼らを今回選出することは現実的ではなく、ザッケローニ監督、原博実技術委員長とも口をそろえて「試合ができる状態ではないとクラブ側から聞いている」と、早々に招集を諦めた。

 そこで当然浮上してくるのが、代役候補の問題である。今月14日に代表メンバーが発表されて以降、多くのメディアや紙面でその話題が騒がれている。ここではヨルダン戦へのウォームアップの意味合いもあるこのカナダ戦を含め、どのような起用法があるかを整理していきたい。

 まず言及しなければならないのは、本田と長友が抜けた穴の大きさである。これは、ザッケローニ監督や多くの選手たちから「(2人の不在は)チームにとって手痛いことであるのは間違いない」という言葉が自然と漏れてきていることでも、理解できるだろう。実際にともに戦っている仲間も認める、2人の存在感。予選突破が決まるか否かの試合を前に、よりによって中核の選手がいないという現状は日本にとっては頭痛の種である。
 それでも今のザックジャパンには、世界の舞台で活躍する若い力や、信頼厚きベテランも存在する。彼らがうまく2人の穴を補てんすれば、十分チームのパフォーマンスを維持できるという算段を、指揮官は踏んでいるに違いない。

左SBのファーストチョイスは駒野が有力

 長友が不在の左サイドバック(SB)には駒野友一(ジュビロ磐田)と酒井高徳(シュツットガルト/ドイツ)の2人が候補に挙がっている。
 ここ最近の酒井高の成長ぶりは著しい。シュツットガルトでは先発に定着しており、運動量豊富にサイドを上下動するパフォーマンスが際立つ。代表でも昨年11月のオマーン戦で後半途中でピッチに立つと、試合終了間際の岡崎慎司(シュツットガルト/ドイツ)の決勝点をお膳立てするクロスを上げた。左サイドで対面した相手DFに向かって果敢に仕掛けていったその姿からは、欧州の舞台で自分のプレーが通用していることからくる自信が感じ取れた。

 ただし、今回最終ラインの最左翼に立つ選手のファーストチョイスは、おそらく駒野になるだろう。その理由は、抜群の安定感にある。
 日本代表の選手を“海外組”、“国内組”と分けて表現し始めてから久しく経つが、その観点からすると駒野は間違いなく国内組を代表する屈指のSBであり、海外組にも劣らない同ポジションのスペシャリストである。

「ザッケローニ監督のやり方もすでに頭に入っているので、攻撃はもちろん守備でも問題はない」と本人が強調する通り、攻撃ではパスのつなぎやクロスの精度でチームに貢献できることはもちろん、最もデリケートな要素である守備でのポジショニングや動き方といった細かい点も、彼はすでに熟知している。

 博打(ばくち)的なさい配はしないザッケローニ監督。彼が戦術的にも理論的にも全幅の信頼をおける駒野の起用に踏み切ることに、現状では異論も少ないだろう。

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著者プロフィール

サッカー専門新聞『EL GOLAZO』を発行する(株)スクワッドの記者兼事業開発部統括マネージャー。名古屋グランパス担当時代は、本田圭佑や吉田麻也を若い時代から取材する機会に恵まれる。その後川崎フロンターレ、FC東京、日本代表担当を歴任。その他に『Number』や新聞各紙にも寄稿してきた。現在は『EL GOLAZO』の事業コンテンツ制作や営業施策に関わる。

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