大鵬の孫が初代タイガーマスク率いる掣圏真陰流で初稽古

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入門の裏側に隠された祖父・大鵬の言葉

初代タイガーマスクこと佐山サトル総監率いる掣圏真陰流に入門した横綱・大鵬の孫・納谷幸男 【(C)リアルジャパン】

 掣圏真陰流の新入門生・納谷幸男の入門会見と初稽古が18日、掣圏真陰流『神楽坂スタジオ』で行われた。
 納谷は元・横綱の大鵬を祖父に、元・関脇の貴闘力(現在は鎌苅忠茂氏)を父に持つ格闘技界のサラブレッド。身長196センチ、体重120キロという日本人離れした体格を誇り、この春に高校を卒業したばかりの18歳だ。相撲ではなく、総合格闘技に興味を持ち、昨夏に父親と親交のある佐山サトル総監率いる掣圏真陰流に入門を希望。そして今日、初稽古を迎えた。

 緊張した面持ちで道場に現れた納谷は、「本当に素人なので、強くなるのか自分でも自信がないですが、“最後までやり切る”のが目標。自分のできるところまでやり通したいなと思っています」とコメント。この“最後までやり切る”という言葉の裏には、この1月に亡くなった祖父・大鵬の思いがあるという。

「やっぱりお祖父ちゃんは相撲の道に進んでほしかったと思うんですけど、最後に“やるなら最後までやり通せ”という風に言われたので。その言葉を胸にやっていきたいなと思います」

 相撲の経験はトータルで2年間があるが、自ら率先して挑んだわけではなかったため、長続きしなかった。しかし、高校時代に短期間ながら、佐山総監と親交の厚い“キックの神様”藤原敏男に師事。それによって総合格闘技への思いが高まり、今回の入門となった。

 掣圏真陰流は総合格闘技やキックボクシングで活躍する桜木裕司や瓜田幸造の2大王者を輩出しているが、その根本は「武道家」であり、「武士道」である。納谷も入門生として、掣圏真陰流所属の武道家として、当然、格闘技の技術だけではなく、礼儀作法や精神的な部分の教えも学んでいく。

 佐山総監は「納谷君は素直な子ですし、相撲という厳しい世界の影響だと思いますけど、礼儀作法や道を追求していく意味をよく知っていると思います。ただ、まだ殻の中にいる」と現状を分析し、「ルールがないような形で殻を破るのではなくて、仁義礼智信というものを背負った形で殻を破って、世界に出て行く。これを将来、納谷君はやってくれる…いや、必ずやります」と力強く宣言した。

 スーパー・タイガー・ジム時代からこれまでに数千人もの選手を教えてきた佐山総監から見て、格闘家に一番必要なのは「素直さ」だという。それを持った納谷に大きな期待を示すと「自分ではおそらく自信を持ってないと思います。なぜならばまだ開花してないから。これほどの金の卵なのに、まだ殻を割っていない自分がいる。それを割らせて自分を持たせることが最初にやることだと思います」と“自信を持たせること”の必要性を語っていた。

初稽古で重たいミドルキックを披露

初稽古で「緊張した」と言いながらも、センスのある動きを見せた納谷 【(C)リアルジャパン】

 会見の後に行われた初稽古でも佐山総監はマンツーマンで指導。さすがは多くの弟子を育ててきた名伯楽なだけに、指の角度や体重の乗せ方、全身の使い方などを細かく理論的に教えていく。納谷も真剣な表情でそれに聞き入っていた。

 刀の持ち方、刀礼の順序、礼の仕方などの礼儀作法からスタートし、さらには実戦的な練習も公開。パンチやキックの練習となると、佐山総監のアドバイスがすぐに効果を現し、見るからに動きがシャープになっていく。ジャブ、ストレート、フックといったパンチのコンビネーションに続き、ミドルキックの打ち方も伝授。桜木師範や瓜田師範も交えて、打撃のみならず、チキンウイングアームロックなどの関節技やパスガードの仕方など1時間にわたりみっちりと指導した。

 目立ったのはその打撃の重さ。素手でジャブを受けた佐山総監が驚くほどの破壊力で、ミドルキックはキックミットを持つ桜木師範が思わず浮き上がるほど。底知れぬポテンシャルを感じさせた。寝技は経験がないだけに戸惑いが見られたが、それでも順応力を発揮。練習終了後、佐山総監は「関節技もパンチもキックも覚えが早い。これは冗談抜きで本当に自信を持っていいと思います」と絶賛していた。

 最初は表情の硬かった納谷だったが、練習の充実感からか、後半は笑顔も覗かせており、「尊敬しているのはお祖父ちゃんであり、佐山先生。懐が大きさや人を思いやる心を見ていて、本当に凄いなと思いました。自分もそういう風になれるように頑張っていきたいです」と力強く宣言した。

目指すは総合格闘技の世界王者

 まずは120キロある体重を絞って格闘家としての肉体作りに励むという。そこから実戦的なトレーニングに入っていき、掣圏真陰流が推し進める『武道 掣圏』でのデビューを目指す。

 当然、その先にはUFCを筆頭とした世界レベルの総合格闘技が待ち構えている。佐山総監は「武道の選手としてUFCに打って出ていきたい」とコメントしていたが、「掣圏真陰流 興義館」では、桜木裕司、瓜田幸造のほか、チャンピオン及び、チャンピオンレベルの総合格闘家が日常的に合同トレーニングを行っている。さらに、新弟子募集もスタートしており、来月には寮も完成し、昼夜問わず練習に励める環境が整うという。

 また、佐山総監は「あくまで先の話ですが、本人が望むならプロレスをやる可能性もあるでしょう。最初からそれに持っていくと違う方向に行ってしまいますけれど、将来的には可能性もあるのではないかと思います」と語っており、プロレスデビューの可能性も示唆した。今月22日に行われるリアルジャパンプロレス後楽園ホール大会のセコンドに付くという。

「この環境にドップリ浸かっていけば、必ず強くなると確信を持っています。まだルーキーの状態で、高校を卒業したばっかりですが、こんな素直な子が入ってくれるとこちらもやり甲斐があります。どういう風に成長していくか。精神的にどれだけ強くなっていくか。礼儀作法とともに強くなっていく幸男の姿を見守ってやってください。お願いします」

 最後にあえて「幸男」と呼んだのも佐山総監の期待と愛情の表れ。尊敬すべき祖父と新たな師匠の言葉に応えるべく、納谷幸男は格闘家としての果てなき道を歩み始めた。

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