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錦織に向けられる世界からの期待
全豪ベスト16も“当然”という進化

“史上最強の時代”で戦う錦織

グランドスラム16強も、“当然”になりつつある錦織。次のステージへの1年がスタートした
グランドスラム16強も、“当然”になりつつある錦織。次のステージへの1年がスタートした【Getty Images】

 錦織圭(日清食品)が第4シードのダビド・フェレール(スペイン)との4回戦に挑む日、地元紙のテニス記事を読んでいてちょっと驚きの事実を知った。現在、ATPランキングの250位内に10代の選手は一人もいないのだという。一応調べてみると本当だった。この現実はプロテニスのとてつもない層の厚さを物語るが、近年男子テニスが最強の時代を高らかにうたっていた間に、次代のスターがまったく育っていなかったという失態は、テニスビジネスに携わる人々の顔を曇らせることだろう。もちろん彼らはずっと前から気付いていたに違いない。だから、2008年に18歳で初のトップ100入りを果たした錦織に世界が目を向けたのだ。


 肘の故障によるブランクで、次の節目となるトップ50入りは青写真より遅れたものの、常にポスト世代の代表格であり続けた錦織。そんな世界のテニス界のホープも先月23歳になった。積み重ねてきた経験と成長は、“順当以上”の結果を求める本人の強い気持ちを生み、そこにプレッシャーは付き物だ。しかし錦織は、この厄介な友人と実にうまくつき合っているように思う。


 それを可能にしている米国育ちのメンタリティは、今さらくどくど説明することでもないが、この全豪オープン中にも思わず笑ってしまう記者とのやり取りがあった。ノバック・ジョコビッチ(セルビア)、ロジャー・フェデラー(スイス)、アンディ・マレー(スコットランド)、ラファエル・ナダル(スペイン)のビッグ4を筆頭に熾烈(しれつ)のバトルが繰り広げられるこの時代を戦わなければいけないことは、不運と感じているのか、逆にやりがいがあることなのか――。そんな質問に対し、しばし言葉を探しているように見えた錦織の答えは、「えーっと……なんとも思っていないですね」。あっぱれ、これぞ錦織圭。

グランドスラム16強も「慣れてきた」

 今大会では1回戦から3回戦まで連続して第1セットがタイブレークにもつれたあたりに、ひょっとしたらプレッシャーが潜んでいたのかもしれないが、そのセットを取ろうが落とそうが、第2セット以降は落ち着いて安定感のあるプレーを展開した。その先も勝ち進むことを前提とした、無理のないゲームの取り方が印象的だった。

 対戦したのは、ビクター・ハネスク(ルーマニア/63位)、カルロス・バーロック(アルゼンチン/68位)、イェフゲニ・ドンスコイ(ロシア/82位)。勝ち進むほどに対戦相手のランキングが下がっていくという妙な状況で、日本ならよほどのテニスファンでなければ知らない名前ばかりだが、この場合ランキングや知名度よりも「勝ち上がってきた」という事実のほうが重い。ブリスベンで痛めた右膝の不安も拭いきれてはいなかった。その中で、順当にシードを守っての4回戦進出。錦織は「良い意味で、うれしくないというか舞い上がっていない。慣れてきましたね」と、淡々と受け止めた。本当の楽しみはそこからだった。

山口奈緒美

1969年、和歌山県生まれ。ベースボール・マガジン社『テニスマガジン』編集部を経てフリーランスに。1999年より全グランドスラムの取材を敢行し、スポーツ系雑誌やウェブサイトに大会レポートやコラムを執筆。大阪在住。

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