錦織に向けられる世界からの期待 全豪ベスト16も“当然”という進化
“史上最強の時代”で戦う錦織
グランドスラム16強も、“当然”になりつつある錦織。次のステージへの1年がスタートした 【Getty Images】
肘の故障によるブランクで、次の節目となるトップ50入りは青写真より遅れたものの、常にポスト世代の代表格であり続けた錦織。そんな世界のテニス界のホープも先月23歳になった。積み重ねてきた経験と成長は、“順当以上”の結果を求める本人の強い気持ちを生み、そこにプレッシャーは付き物だ。しかし錦織は、この厄介な友人と実にうまくつき合っているように思う。
それを可能にしている米国育ちのメンタリティは、今さらくどくど説明することでもないが、この全豪オープン中にも思わず笑ってしまう記者とのやり取りがあった。ノバック・ジョコビッチ(セルビア)、ロジャー・フェデラー(スイス)、アンディ・マレー(スコットランド)、ラファエル・ナダル(スペイン)のビッグ4を筆頭に熾烈(しれつ)のバトルが繰り広げられるこの時代を戦わなければいけないことは、不運と感じているのか、逆にやりがいがあることなのか――。そんな質問に対し、しばし言葉を探しているように見えた錦織の答えは、「えーっと……なんとも思っていないですね」。あっぱれ、これぞ錦織圭。
グランドスラム16強も「慣れてきた」
対戦したのは、ビクター・ハネスク(ルーマニア/63位)、カルロス・バーロック(アルゼンチン/68位)、イェフゲニ・ドンスコイ(ロシア/82位)。勝ち進むほどに対戦相手のランキングが下がっていくという妙な状況で、日本ならよほどのテニスファンでなければ知らない名前ばかりだが、この場合ランキングや知名度よりも「勝ち上がってきた」という事実のほうが重い。ブリスベンで痛めた右膝の不安も拭いきれてはいなかった。その中で、順当にシードを守っての4回戦進出。錦織は「良い意味で、うれしくないというか舞い上がっていない。慣れてきましたね」と、淡々と受け止めた。本当の楽しみはそこからだった。