男子・豊川、女子・立命館宇治がV 勝利の陰に異なるドラマ=全国高校駅伝

中尾義理

高校駅伝・男子は、豊川が初出場初優勝を達成 【写真は共同】

 冬の都大路を彩る全国高校駅伝。豊川(愛知)が史上2校目の男女アベック優勝を視界に入れていたが、先に行われた女子は最終5区で立命館宇治(京都)が逆転に成功し、1時間7分22秒で5年ぶり3度目の栄冠をつかんだ。男子は豊川がケニア人留学生の3区で独走態勢を築き、2時間2分55秒で初出場初優勝を成し遂げた。伝統校の復活Vと男子初陣V。2つのドラマが成就した。

豊川が初V 転入生がチームの意識を変えた

 豊川の男子は初出場という以上に、3月に強豪・仙台育英(宮城)から主力3人らが転入してきたことで注目を浴びた。規定により全国高校総体につながる大会には出場できなかったが、ちょうど総体の東海地区大会が開催された6月、転入生の服部弾馬(3年)と一色恭志(3年)が5000mでそれぞれ13分59秒20、14分00秒31というハイレベルな自己ベストをマークしたのは、彼らのプライドだったのだろう。
 転入にはさまざまな意見があったが、チームは早くから目標を駅伝に絞って結束。夏休みの40日間合宿など、1日も休まずにトレーニングを重ねてきた。「学校の協力もあって(転入生の)彼らと一緒に集中できる環境が整い、元々うちにいた選手もやる気になってくれました」と森安彦監督は話す。
 従来メンバーの一人である7区の皆浦巧(2年)は「強い先輩たちに刺激を受けました」と言い、脚を痛めたために出番がなかった主将の鈴木悠日(3年)も「転入生が来て、優勝を意識するチームになれました」とチームの変化と成長を実感していた。転入生が巻き起こした相乗効果が快進撃へとつながった。

 レースでは服部が1区を任された。勝負どころを見逃さず、スパート勝負に応じて、先頭と1秒差の区間2位。たすきは流れに乗り、ライバルと見られた西脇工(兵庫)より19秒先に3区の留学生カレミ・ズク(3年)へと渡った。ズクの快足で3区を終えて、豊川のリードは1分以上。続く4区・一色の区間賞が栄冠を決定づけた。
 終わってみれば、後手に回った2位西脇工に1分51秒差の完勝。転入を取り巻く様々な反響の渦中にあった服部は「みんなが真剣に練習に取り組んだ結果です。このチームで走れて良かったなと思います。本当に楽しかった」。屈託のない言葉に確かな成長が見て取れた。
 新しい環境に飛び込み、短期間で結果を出すのは容易ではない。しかし、転入組も受け入れ組も、「あの都大路で思い切り走りたい」という一心に支えられた。仲間に恵まれ、目標を追いかける。ぶれない気持ちでたどり着いた頂点だった。

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著者プロフィール

愛媛県出身。地方紙記者を4年務めた後、フリー記者。中学から大学まで競技した陸上競技をはじめスポーツ、アウトドア、旅紀行をテーマに取材・執筆する。

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