男子・豊川、女子・立命館宇治がV 勝利の陰に異なるドラマ=全国高校駅伝

中尾義理

立命館宇治、5区逆転で鮮やかな返り咲き

混戦が予想された女子は、立命館宇治が5年ぶり3度目の栄冠をつかんだ 【写真は共同】

 混戦が予想された女子は、最多4度目のVを2連覇で飾ろうともくろむ豊川、実力選手がそろう立命館宇治、8年連続3位以内を続ける興譲館(岡山)が3強と目された。ただ序盤に主導権を握ったのは、まだ全国入賞がない大阪薫英女学院(大阪)。2区で先頭に立ち、存在感を光らせた。
 しかし3区で実力上位校が本領を発揮。残り300メートルで豊川の鷲見梓沙(1年)が区間新の走りでトップに躍り出ると、立命館宇治も池内彩乃(3年)が薫英女学院をかわして2位でたすきをつないだ。4区では立命館宇治が豊川に追いつき、並走し、豊川が再びリードを奪うという激しい攻防が展開した。
 豊川が4秒リードして、たすきは5区へ。追う立命館宇治は、荻野由信監督が「この子に勝てるアンカーはいない」と絶大な信頼を寄せた青木奈波(3年)。前回も5区を区間6位で走っている。3年連続1区を任された菅野七虹(3年)も「青木なら絶対大丈夫」と見守った。
 青木は1.5キロで豊川の息遣いが聞こえる差まで接近すると、相手が立て直す間を与えずに、後方へ押しやった。フィニッシュがある競技場に戻って残り1周。出迎えにきた荻野監督の顔を見た青木は「夢のような1周でした」と振り返る。青木の5区日本人歴代2位タイとなる15分32秒の区間記録は、優勝チームにふさわしい締めくくりだった。

 立命館宇治の勝因は、1年生時から活躍した3年生がきっちりと実力を付け、最後の大舞台で実力をいかんなく発揮した点に尽きる。24年連続出場の歴史の中には、エースの故障やインフルエンザ感染による惨敗などがあり、逃げる思いで都大路から帰ったことも。荻野監督は「核となる3年生を生かすことができたら負けないと思っていました。駅伝らしい駅伝がようやくできたと思います」と感慨にひたった。
 一方、2連覇に届かなかった豊川。女子も仙台育英からの転入生を迎えたが、過去3度の優勝に貢献したケニア人留学生が今季は不在。「留学生がいないから勝てなかったとは言わせない」と陣営は引き締まり、日本人だけで戦えるチームに成長してきた。1、2区でビハインドを背負ったが、中盤区間の押し上げはさすが。ただ立命館宇治が上手だった。

勢力図に新風 初入賞チームが複数誕生

 入賞圏を伝統校が占めがちな高校駅伝に、今年は男女とも新風が吹いた。男子では豊川と同じく初出場の白鷗大足利(栃木)が1区20位から6位入賞へと駆け上がる大健闘を見せた。2区以外の6区間を2年生が走った山梨学院大附(山梨)は12度目の都大路で8位に初入賞。6年前には40位と苦しんだ伊賀白鳳(三重)は1区1位で発進し、過去最高の3位に入った。女子では3区途中までトップを快走した5位の薫英女学院をたたえたい。青森山田(青森)も7位に初入賞を果たした。
 表彰式の後、立命館宇治の指揮官は「明日の朝から、また練習です」と表情を引き締めた。次のレースへ、たすきは既に走り出している。来年の高校駅伝にはどんな勢力図が描かれているだろうか。

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著者プロフィール

愛媛県出身。地方紙記者を4年務めた後、フリー記者。中学から大学まで競技した陸上競技をはじめスポーツ、アウトドア、旅紀行をテーマに取材・執筆する。

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