失意のチェルシー、敗戦の理由=最後まで出なかった“あと一歩”
なぜ、チェルシーは敗れてしまったのか?
コリンチャンスに敗れ、肩を落とすチェルシーの面々。敗戦の要因は何だったのか 【写真:YUTAKA/アフロスポーツ】
中立地である横浜国際総合競技場を、ホームのパカエンブーのように熱く染め上げたコリンチャンスサポーターたち。スタジアムに訪れた日本人サッカーファンの中には、彼らと同じマフラーを購入して身にまとう人も少なくなかった。情熱的で、どこか寂しい郷愁のようなものを感じさせるチャントも印象的で、脳裏に焼き付いている。おそらく日本のサッカーファンはコリンチャンスという名前を一生忘れることはないだろう。中立国で行われる国際大会で現地の人たちを巻き込み、一体感をつくり出す。ひとつのフットボールの理想を示されたような気がしている。
一方のチェルシーに話を移すと、UEFA(欧州サッカー連盟)スーパーカップやコミュニティーシールドの敗戦を含め、今シーズンは獲得が見込めるタイトルをことごとく逃している。チャンピオンズリーグ(CL)もグループリーグで敗退し、「クラブW杯をチームの発奮材料にしたい」と述べていたベニテス監督の望みもかなわなかった。
それほど悪い試合をしたとは思わないが、なぜ、チェルシーはコリンチャンスに敗れてしまったのか?
リスペクトによるダビド・ルイスのセンターバック起用
コリンチャンス対チェルシーのピッチ上にも多くのリスペクトが存在していた。一つはチェルシーのディフェンスラインの入れ替えだ。完勝した準決勝のモンテレイ戦でボランチに入ったダビド・ルイスを、この試合では本来のセンターバック(CB)に下げ、イバノビッチは右サイドバック(SB)に回った。
D・ルイスは対人能力に長けたハードマーカータイプの選手だ。ベニテス監督によれば、モンテレイ戦では相手がバイタルエリア(CBとボランチの間のスペース)に人数をかけてくるため、D・ルイスをボランチに置いたという。その策は功を奏し、モンテレイの中盤の選手をことごとくフィジカルで圧倒し、彼らに強烈なプレッシャーをかけ続けて相手のリズムを崩した。
コリンチャンス戦でD・ルイスを再びCBに戻したのは、そこが相手の攻撃の起点であると判断したからだろう。実際、相手のカウンターの時はD・ルイスがエメルソンのドリブルを封じ込めて事なきを得る場面が多く見られた。対戦相手がドリブルを多く使うエリア、あるいはボールキープを長くするエリアにD・ルイスを置くのは有効な一手だ。また、D・ルイスをCBに置くことで、右サイドバックにアスピリクエタではなくイバノビッチを使ってサイドの守備力を高める狙いもあったのかもしれない。