失意のチェルシー、敗戦の理由=最後まで出なかった“あと一歩”

清水英斗

なぜ、チェルシーは敗れてしまったのか?

コリンチャンスに敗れ、肩を落とすチェルシーの面々。敗戦の要因は何だったのか 【写真:YUTAKA/アフロスポーツ】

 2012年クラブワールドカップ(W杯)決勝戦は南米王者のコリンチャンスが欧州王者のチェルシーに1−0で勝利した。ここ数年、欧州王者に連覇されていたクラブW杯で6大会ぶりに南米王者が世界一に輝いた。

 中立地である横浜国際総合競技場を、ホームのパカエンブーのように熱く染め上げたコリンチャンスサポーターたち。スタジアムに訪れた日本人サッカーファンの中には、彼らと同じマフラーを購入して身にまとう人も少なくなかった。情熱的で、どこか寂しい郷愁のようなものを感じさせるチャントも印象的で、脳裏に焼き付いている。おそらく日本のサッカーファンはコリンチャンスという名前を一生忘れることはないだろう。中立国で行われる国際大会で現地の人たちを巻き込み、一体感をつくり出す。ひとつのフットボールの理想を示されたような気がしている。

 一方のチェルシーに話を移すと、UEFA(欧州サッカー連盟)スーパーカップやコミュニティーシールドの敗戦を含め、今シーズンは獲得が見込めるタイトルをことごとく逃している。チャンピオンズリーグ(CL)もグループリーグで敗退し、「クラブW杯をチームの発奮材料にしたい」と述べていたベニテス監督の望みもかなわなかった。

 それほど悪い試合をしたとは思わないが、なぜ、チェルシーはコリンチャンスに敗れてしまったのか?

リスペクトによるダビド・ルイスのセンターバック起用

 キーワードは“相手をリスペクトする”だ。尊敬する、敬意を表すといった本来の意味に加え、サッカーで使用する場合には、相手の価値を認めた上で、その価値をどのように消すべきかを分析して対応するというニュアンスが含まれる。戦術分析が緻密(ちみつ)になった現代においては、もはやサッカー用語と言ってもいい。

 コリンチャンス対チェルシーのピッチ上にも多くのリスペクトが存在していた。一つはチェルシーのディフェンスラインの入れ替えだ。完勝した準決勝のモンテレイ戦でボランチに入ったダビド・ルイスを、この試合では本来のセンターバック(CB)に下げ、イバノビッチは右サイドバック(SB)に回った。

 D・ルイスは対人能力に長けたハードマーカータイプの選手だ。ベニテス監督によれば、モンテレイ戦では相手がバイタルエリア(CBとボランチの間のスペース)に人数をかけてくるため、D・ルイスをボランチに置いたという。その策は功を奏し、モンテレイの中盤の選手をことごとくフィジカルで圧倒し、彼らに強烈なプレッシャーをかけ続けて相手のリズムを崩した。

 コリンチャンス戦でD・ルイスを再びCBに戻したのは、そこが相手の攻撃の起点であると判断したからだろう。実際、相手のカウンターの時はD・ルイスがエメルソンのドリブルを封じ込めて事なきを得る場面が多く見られた。対戦相手がドリブルを多く使うエリア、あるいはボールキープを長くするエリアにD・ルイスを置くのは有効な一手だ。また、D・ルイスをCBに置くことで、右サイドバックにアスピリクエタではなくイバノビッチを使ってサイドの守備力を高める狙いもあったのかもしれない。

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著者プロフィール

1979年12月1日生まれ、岐阜県下呂市出身。プレーヤー目線で試合の深みを切り取るサッカーライター。著書は「欧州サッカー 名将の戦術事典」「サッカーは監督で決まる リーダーたちの統率術」「サッカー観戦力 プロでも見落とすワンランク上の視点」など。現在も週に1回はボールを蹴っており、海外取材では現地の人たちとサッカーを通じて触れ合うのが楽しみとなっている。

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