アイスホッケー日本代表、乗り越えるべき“敗因” 16年ぶりの五輪出場はならず

沢田聡子
「夢のまた夢、ですけどね。でも実際NHLもそうだったので。それを可能にしてきましたから、本当に強く願って努力すれば不可能ではない、もちろんチャンスはあると思います」
 2010年10月・日光で、海外での経験を経て7年ぶりに日本のチームに復帰した日本代表GK福藤豊は、五輪について語った。
 そして2012年11月、日光で行われたソチ五輪1次予選、日本は3位に終わり、16年ぶりの五輪は夢の舞台のままで終わった。

ホッケータウン・日光で迎えた五輪予選

五輪予選に挑んだ日本代表に立ちはだかった、思わぬ壁とは。写真はゴールを守る福藤豊 【田口有史】

 1位のみ最終予選に進める1次予選を、日本代表はアジア有数のホッケータウン・日光で戦った。NHLでプレーした唯一の日本人である日光アイスバックスGK・福藤は、バックスのホームアリーナで五輪予選を迎えるにあたって「すごく楽しみ」と語っていた。
 日本が入ったグループJは、イギリス(世界ランキング21位)、日本(22位)、ルーマニア(27位)、韓国(28位)の4か国が、総当たりのリーグ戦を11月9〜11日の3日間で行った。第1戦、最もくみしやすいともされるルーマニアに対し攻めながらもなかなかゴールが割れない日本は、GK福藤の攻守にも助けられて2−0で白星を挙げた。

 第2戦の対戦相手・韓国は、地元(平昌)で開催する2018年冬季五輪を前に強化が進み、アジアリーグで日本の選手と戦うことによっても力を着けてきた。日本にとって以前は格下だった韓国は、今や手ごわい相手に成長している。韓国は第1戦でイギリスを延長・ゲームウイニングショットの末に5−4で破り、勢いに乗ってもいた。
 韓国戦、日本はポイントゲッターと目されるFW久慈修平が、第1ピリオド11分39秒、パワープレー(相手の反則による数的優位の状態)で貴重な先制点を挙げる。第1ピリオド終盤、韓国にペナルティショットが与えられたがGK福藤が止めてガッツポーズを見せた。第2ピリオド8分51秒、今度は韓国がパワープレーゴールを挙げるが、直後の9分32秒、日本はFW小原大輔が美しいゴールを決めて再度リードする。しかし第3ピリオド終了まで残り11秒、日本は同点ゴールを許し、目前にあった勝ち点3を逃す。
 延長に入って3分13秒、パワープレーの好機に、久慈がGKの左肩口を抜くシュートを決め、日本は危ういところで勝ちを拾った。
 試合終了後、貴重な2点目のゴールを挙げたFW小原は、地元開催による重圧について漏らしている。壮行試合ではできていた良い動きが、予選に入ってからは出せないという。
「地元でやれるのは本当は有利なはずなんですけども、逆にちょっとプレッシャーもあってなかなか……」

最終日を首位で迎えるも……

試合後、リンクに立ち尽くす小原(左)ら日本代表 【田口有史】

 第2戦終了時点でなんとか首位を保った日本は最終日、勝つことが予選突破の絶対条件であるイギリス戦に臨んだ。

 しかし、第1ピリオドは日本にとって悪夢のような展開になる。大声援の中で日本は動きが硬く、フィジカルが強いイギリス相手にゴール前で小競り合いを起こしてペナルティをとられる。9分59秒、キルプレー(自軍の反則による数的不利の状態)を守りきれずに失点。更に30秒後、イギリスはGK福藤の見えないところからのシュートで追加点を挙げ、日本は2点を追いかけるという厳しい状況に追い込まれた。第2ピリオドまで、日本は追加点は許さないものの攻撃も今ひとつという状態が続く。
 第3ピリオド、セット(同時にプレーする選手の組み合わせ)を組み替えた日本は、ようやく目が覚めたように動き出す。足が止まり気味のイギリスに対し運動量で上回る日本は自分たちの持ち味を発揮し始め、4分1秒、久慈がゴールを挙げる。終始押し気味の日本はしかし同点のゴールが奪えない。試合終了まで残り1分41秒で得たパワープレーは、日本にとって五輪への道をつなぐ最後のチャンスだったが、GK福藤を氷から上げての6人攻撃も実らなかった。霧降アリーナを埋めたファンの前で、日本代表はイギリス国歌を聞いた。

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著者プロフィール

1972年埼玉県生まれ。早稲田大学第一文学部卒業後、出版社に勤めながら、97年にライターとして活動を始める。2004年からフリー。主に採点競技(アーティスティックスイミング等)やアイスホッケーを取材して雑誌やウェブに寄稿、現在に至る。

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