アイスホッケー日本代表、乗り越えるべき“敗因” 16年ぶりの五輪出場はならず

沢田聡子

監督が挙げた敗因とは

日本代表、長野五輪以来となる16年ぶりの五輪出場はならず 【田口有史】

 試合後の記者会見で日本代表監督のマーク・マホンは、敗因のひとつとして「地元での開催のプレッシャー」を挙げた。
「このチームは、注目された中での試合経験が全くない状況で、自分たちの質の高いプレーができなかった。ただし、こういう経験をしないと、日本のアイスホッケーがいつまでたっても成長しないと言えます。日本の選手も厳しい環境でもっともっと経験を積んでいかないと、なかなか世界で通用しない」

 予選を通して日本が挙げた6得点のうち3得点を決めている久慈は「僕は個人的には、プレッシャーは自分にプラスに考えてました」とコメントしているが、久慈は例外だったということなのかもしれない。

 福藤は「注目されていることはみんな分かっていた」と言う。
「プレッシャーを感じなかったと言えばうそになる。やはりそのプレッシャーに勝ってこそ結果を出せたと思っているので、それに少し負けてしまったかな。でもやはり、こういった緊張感の中で試合をするということは、選手にとってすごく良い経験を積むチャンスであると思うので、若い選手はやはりもっともっと上を目指して頑張ってほしいですね。僕たち自身もやはりもっともっとレベルアップしていかないと、このレベルでは勝っていけない」
 10代の頃から日本のアイスホッケーの光明であり続け、北米での厳しい競技生活を知る30歳の福藤の言葉は重い。

個人の挑戦での成長には限界

果敢に敵に挑むFW久慈(白・21) 【田口有史】

 トリノ、バンクーバーと二つの五輪では最終予選まで進んだ日本は、地元開催のソチ五輪1次予選を突破できなかった。韓国を下回る3位という結果が全てだが、イギリス戦の第3ピリオドを思い起こせば、日本が持てる力を全て出し切ったとは思えない。日本代表は地元開催を有利と捉えられなかった。
 向上心を持って海外でプレーすることが、日本の選手にとって必要であることは事実だろう。しかし、若手選手の個人的な挑戦に全てを託すには、日本アイスホッケー界が抱える課題は重すぎる。アイスホッケーを愛する日光のアリーナを埋めた失望感を忘れないこと、それがメディアを含めた関係者にも課せられた使命だ。重圧を自らの力に変えられる強さを日本代表が得るために、取り巻く環境をもプロ意識を持って整えなくてはいけない。
 苦い日光での敗戦は、這い上がるために日本に与えられた試練だ。五輪という夢の舞台へ続く道は、近づく努力を止めたとき永久に閉ざされる。

<了>

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著者プロフィール

1972年埼玉県生まれ。早稲田大学第一文学部卒業後、出版社に勤めながら、97年にライターとして活動を始める。2004年からフリー。主に採点競技(アーティスティックスイミング等)やアイスホッケーを取材して雑誌やウェブに寄稿、現在に至る。

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