追い切り日撮影の悲哀、ホエールは栗東で生き返る=乗峯栄一の「競馬巴投げ!」

乗峯栄一

トレセン写真を強要されている訳ではないが……

[写真1]三冠戦すべて2着だったヴィルシーナ、今度こそビッグタイトル戴冠なるか 【写真:乗峯栄一】

 別にこのスポーツナビの連載、トレセン写真が強要されている訳ではないが、「オレの売りって、普通の競馬ライターと違って、けっこう頻繁に栗東トレセン行ってることぐらいだろうなあ」と思うところがある。スポーツナビ入稿の週とGIが重なると、なるべくトレセン行って、それも出来るなら馬場開場時間には坂路上までのぼって(坂路上が一番有力馬に出会う確率が高い)、ぞろぞろ出てくるGIゼッケン馬の写真を撮りたいと思っている。

 一番親しいマスコミ人は、長年コラムを連載してきているスポニチ記者陣なのだが、新聞社の場合、記者とカメラマンとは明確に仕事が分かれているので、「有力馬が何時に坂路に現れて、何時に追い切るか」というような情報は彼らはあまり眼中にない。記者の場合、調教師、騎手、あるいは担当調教助手への取材がメインになるからだ。

グリーンチャンネル撮影スタッフは優しい

[写真2]ヴィルシーナと同じ友道厩舎のラシンティランテ、一発大穴ならこちら 【写真:乗峯栄一】

 でも坂路上には大体グリーンチャンネルの撮影スタッフが控えている。何度も坂路上に上がっていると、自然にこの人たちと親しくなり、しかも彼らは「どの馬が何時に坂路上に現れるか」を驚くほど詳細に把握しているし(仕事なんだから当たり前かもしれないが)。さらに「え? ヴィルシーナが何時に坂路に現れるかですか? それは職業上の秘密なので教えられません」などという、そんな意地悪なことは言わない。みんな親切に教えてくれる。さらに坂路下にもグリーンチャンネル・スタッフがいて、「いま××、坂路追い切りに入りました」とトランシーバーで連絡してくる。「え、いまの何て連絡?」と聞いても「教えなーい」とは言わない。「もうじきヴィルシーナ上がってきますよ」と微笑んで教えてくれる[写真1・ヴィルシーナ]。

 さらにいいことは、一人で得体の知れないオッサンが写真撮っていると、「何、こんなところで写真撮っとるんじゃ、馬が驚くやろ」と調教スタッフから怒鳴られるんじゃないかという危惧にかられる。心細くもある。しかしグリーンチャンネル撮影と一緒だと「まず怒られないだろう」という安心感がある。何といっても写真カメラはテレビカメラより小さいからだ。ただ、たまに、あまり前に出すぎてテレビ撮影の妨げになることもある。
「の、乗峯さん、ああ……」という撮影ディレクターの呻きは何回か聞いた。恩をアダで返すというやつだ。でも、それでも彼らは相変わらず優しい。

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著者プロフィール

 1955年岡山県生まれ。文筆業。92年「奈良林さんのアドバイス」で「小説新潮」新人賞佳作受賞。98年「なにわ忠臣蔵伝説」で朝日新人文学賞受賞。92年より大阪スポニチで競馬コラム連載中で、そのせいで折あらば栗東トレセンに出向いている。著書に「なにわ忠臣蔵伝説」(朝日出版社)「いつかバラの花咲く馬券を」(アールズ出版)等。ブログ「乗峯栄一のトレセン・リポート」

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