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円熟の域に達したクラシコ
これまでと一体何が違うのか
アドリアーノ(右)はセンターバックで出場し、クラシコに驚きを与えた
アドリアーノ(右)はセンターバックで出場し、クラシコに驚きを与えた【写真:アフロ】

 7日に行われたリーガ・エスパニョーラ第7節のバルセロナ対レアル・マドリー。8月のスーペル・コパ以来、早くも今季3回目の対戦となる“エル・クラシコ”(伝統の一戦)は2−2の引き分けで幕を閉じた。

 元レアル・マドリー主将のラウル・ゴンサレスは、この試合について「フェアな結果。どちらも良いプレーをした」と評価している。お互いに持ち味を発揮し、両エースのリオネル・メッシ、クリスティアーノ・ロナウドがそれぞれ2点を挙げ、ゴールチャンスはともに6回ずつ。引き分けは妥当な結果だろう。


 今シーズン、まだまだ本調子とは言えない両チームであることは間違いない。しかし、同じメンバーで何度となく戦ってきただけに、クラシコの試合内容は対戦を重ねるごとに円熟し続け、今回の対戦にもいくつかの注目すべき新たな見どころが含まれていた。


 グアルディオラ氏が退任してティト・ビラノバに指揮が移ったバルセロナと、3年目のシーズンを迎えたモリーニョが率いるレアル・マドリー。今までのクラシコから何が変わり、何が変わらなかったのか。

アドリアーノのセンターバック起用は哲学の洗練

 今回バルセロナのスタメンが発表されたとき、メディアからは「ビラノバまさかの3バック採用か」「セルヒオ・ブスケッツのセンターバック(CB)+シャビのアンカー」など、さまざまな布陣の予測が飛び交った。しかしふたを開けてみると、なんと正解は普段サイドで出場しているアドリアーノをCBで起用することだった。


 試合後のハビエル・マスチェラーノのコメントによれば、「この形は練習でやっていたけど、ずっと隠していた」とのこと。レアル・マドリーのみならず、世界中のサッカーファンが一杯食わされた格好だ。


 ジェラール・ピケやカルレス・プジョルのケガにより、CBの駒が足りなくなったバルセロナだが、前線から厳しいプレスをかけてくるレアル・マドリーを相手に、足元のテクニックを信頼して先発させられるのはアドリアーノだけだったということだろう。アーセナルから移籍してきたアレクサンドル・ソングはまだバルセロナのパステンポの中でスムーズにプレーできておらず、また、ユース上がりで経験の乏しいマルク・バルトラの起用も見送ったようだ。


 結果としてアドリアーノとマスチェラーノが並ぶディフェンスラインは、両者がドリブルでビルドアップに貢献することも多く、パスワークもうまくこなし、ねらいは奏功した。


 最大の心配事は、前半20分のレアル・マドリーのCK時にアドリアーノの頭上からセルヒオ・ラモスにヘディングシュートを許したような場面だった。足元のテクニックを優先させたため、全体として長身選手が少なく、空中戦の弱さは否めない。


 しかし、試合全体で69パーセントのボールポゼッションを達成したバルセロナは、結局レアル・マドリーのCKを90分でわずか2本に押さえている。チームとしての長所をきちんと発揮することで、短所が出る回数を極力減らすことに成功した。いかにもバルセロナらしい試合運びである。


 このような考え方は、「7割のボールポゼッションをキープすれば8割の試合に勝てる」というヨハン・クライフの哲学にも合致しており、ビラノバがジョゼップ・グアルディオラ同様、クライフ哲学を受け継ぐ者であることをあらためて印象付けた試合と言えるだろう。

モリーニョが施した最初の対策“アンカー”

 今回のクラシコの得点シーンを見ると、レアルの2得点はどちらも中央突破。一方、バルセロナの2得点はサイド攻撃とセットプレーだ。両チームの本来の特徴をかんがみると、まるであべこべのチャンスメークをしているようにも感じられるが、それを説明するには、ここ数年のクラシコの流れを把握しなければならない。


 思い返せば2年前――。2010年にレアル・マドリーの監督に就任したばかりのモリーニョが、バルセロナ3年目のシーズンを迎えたグアルディオラとクラシコで初対面。ここで0−5の大敗を喫したところから、昨今のクラシコの流れはスタートしている。


 惨敗したモリーニョが最初に施した対策は、アンカーにペペを置く4−3−3の布陣だった。センターFWのメッシが“偽の9番”として中盤に下りて厚みを作るバルセロナ戦術に対し、モリーニョはトップ下を削り、バイタルエリアで主にメッシを見張るアンカーを置いて対応した。


 この対策は一定の効果を挙げ、バルセロナのパスワークを制限した。しかし、明らかに守備に偏った戦術により、レアル・マドリーの攻撃力も大きくダウン。ペペがメッシの手を踏みつけるいざこざなど、レアル・マドリーは試合を壊しながら1点を奪って勝つようなお世辞にも美しいとは言えない試合内容に陥ることもあった。

清水英斗
清水英斗

1979年12月1日生まれ、岐阜県下呂市出身。プレーヤー目線で試合の深みを切り取るサッカーライター。著書は「欧州サッカー 名将の戦術事典」「サッカーは監督で決まる リーダーたちの統率術」「サッカー観戦力 プロでも見落とすワンランク上の視点」など。現在も週に1回はボールを蹴っており、海外取材では現地の人たちとサッカーを通じて触れ合うのが楽しみとなっている。

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