予期せぬクルピとの邂逅にも輝く柿谷の才能=成長した姿を見せつけ、C大阪の攻撃をけん引
毎試合必ず1度以上は決定的な仕事をする
ゴールを決め、祝福される柿谷(中央)。清武、キム・ボギョンが去ったC大阪の攻撃陣をけん引している 【写真は共同】
2年半ぶりに復帰した古巣・C大阪で、柿谷がどのようなプレーを見せるのか。今季のJリーグ全体を見渡しても、それは注目点の1つだった。結果から言えば、現在、J1第27節までに8得点。レギュラーに定着した第14節からの14試合で7得点を挙げ、2試合に1点のハイペースで得点を量産。清武弘嗣、キム・ボギョン移籍後の攻撃陣を立派にけん引している。
FWとして先発に定着、ゴールを量産
「(セルジオ・ソアレス)監督からは、『ゴールに近い位置でプレーしろ』と言われている。ボールを持ったら仕掛けて、決定的な仕事をしたい」。そう話して臨んだこの試合で、ケンペスのヘッドがポストに当たった跳ね返りを押し込み、柿谷はJ1初ゴールを決めた。試合は後半アディショナルタイムに失点。引き分けに終わったため、試合後は言葉少なだったが、柿谷自身、J1での確かな一歩を踏み出した。
その後もFWとしてのプレーが続いた。「(2トップを組む)ケンペスは豪快にゴール目がけて行くから、こぼれ球を狙ったりもしています。相手DFにすきができた時、自分が裏を狙うイメージもあります。キヨ(清武)やタカ(扇原貴宏)、(山口)螢からはいいパスも出るし、裏を狙う動きは続けたい。(FW起用は)監督からの『ゴールにこだわれ』というメッセージだと思うし、その要求に応えたい。役割も定まってきたし、今は日々が充実しています」。
ゴールに近い位置で、自身の能力を最大限に発揮できる環境を得た柿谷。6月は覚せいモードに入る。ナビスコカップ予選第5節の川崎フロンターレ戦、7節のサガン鳥栖戦でそれぞれ2ゴールを挙げると、リーグ戦でも、第14節のサンフレッチェ広島戦でリーグ戦2得点目。そして、清武のC大阪ラストマッチとなった第16節の浦和レッズ戦では、0−1で迎えた後半アディショナルタイムに殊勲の同点ゴールを挙げた。
7月に入っても勢いは止まらない。第17節の横浜F・マリノス戦では、浦和戦と同じく0−1で迎えた終盤に、難易度が非常に高い、トラップからの反転ボレーシュートを決めてみせた。
「キヨくんが抜けた後を埋めるのは曜一朗君。今の曜一朗君は得点を取ってくれる雰囲気を毎試合持っている。すごく信頼している」(山口)。「曜一朗ばかりに頼ってもいられないけど、今はアイツがチームを引っ張ってくれている」(藤本康太)。敗色濃厚な試合を立て続けに救う活躍で、チームメイトの信頼も完全に獲得した。
柔らかなボールタッチに、狭いスペースをすり抜けていくスピードに乗ったドリブル。背後からのボールに対し、背中に目が付いているかのようにピタリと止めるトラップ。柿谷は今季、その技巧をピッチで存分に発揮している。また、そういった曲芸的なプレーをしっかりと結果に結び付けている点も、これまでの彼とは一味違う点だ。さらには、オフ・ザ・ボールの動きや、ボールを奪われた際の守備にも進歩がみられる。彼のプレーを見るだけでも、入場料を払う価値がある。そう思わせる選手というのは実に貴重である。