王者・内村も驚く観客の熱狂 高まる体操人気に「このまま続けて」
徹夜組、入り待ち……内村に沸くファンたち
内村は、2位の田中佑に2点以上の大差をつけて優勝した 【坂本清】
なにしろ、収容人数1400人という体育館なので、前売り券は即日完売。200枚用意したという当日券を買うために前日からの徹夜組もいたという。日本のお家芸とも言われ、常に世界でも戦えるレベルを維持してきた男子体操だが、今回の人気はただごとではない。
13時になり、内村が試合会場に姿を現すと、満場の観客席から拍手が起こった。“ただ歩いているだけで”である。内村自身、試合終了後の記者会見で「入ってきただけで拍手が起きたので、何を求められているのか分からなくて……」と言うように戸惑いを隠せない様子だった。優勝を懸けた世界の大舞台でも動じないように見える内村だが、今までに経験したことのない「一挙手一投足に沸くファン」というものには、いささか動揺しているように見えた。
公式練習中、内村がゆかのフロアを片足跳びで斜めに横断しただけでも拍手、伸身ひねりの連続を確認して着地をぴたりと決めれば、また大きな拍手が起きる。このときはさすがに内村も苦笑いを浮かべ、やりにくそうな表情を浮かべていた。
内村が優勝 あん馬も完璧な演技
練習中も拍手が起こる内村の人気ぶり。しっかりと結果も残した 【坂本清】
中でも、五輪のときによもやの着地の失敗で、日本中を凍りつかせたあん馬では、完璧な演技を披露して15.400点をマーク。ロンドンから帰国してからの練習でも、苦戦していたという降り技もぴたりと決め、着地した直後に「やった!」と快哉をあげた。団体とゆかで2つの銀、個人総合では金と3つのメダルを日本に持ち帰ってきた内村だが、ロンドンでの戦いが、決して楽なものではなかったことを日本中が知っているだけに、この日のあん馬での完璧な演技、そして晴れやかな笑顔は会場につめかけたファンにとって最高のプレゼントだったに違いない。