復活途上の日本マラソン、静かな闘志で中本が入賞
不屈の粘りで中本6位入賞
中本(左)は自分のペースを貫き、粘りのレースで6位入賞を果たした 【写真:築田純/アフロスポーツ】
周回コース2周目の折り返しで8人からなる10位グループに追いつき、そのリズムのまま前の選手に迫り、かわし、5位争いを演じた末、2時間11分16秒で6位入賞を果たした。2011年世界選手権(テグ)を含む過去8度のマラソンすべて10位以内という中本らしい堅実な追い上げ型レースだった。
金メダルは2時間8分1秒でフィニッシュしたスティーブン・キプロティク(ウガンダ)の手に。世界選手権2連覇中のアベル・キルイ(ケニア)が銀メダル、前半独走したウィルソン・キプサング・キプロティッチ(ケニア)が銅メダルとなった。
2大会ぶりに五輪の入賞を取り戻した日本。中本の6位入賞は日本の男子マラソンにとって、ひと筋の光明ではある。しかし、11キロすぎから遅れた山本亮(佐川急便)は40位に、30キロすぎまで入賞争いグループにいた藤原新(ミキハウス)は45位にまで沈んだ。中本は「“マラソンの日本”を復活させたい」と言った。再建途上であることはまだ変わらない。
貫いた「自分のペース」
10キロまでは5キロ15分20秒ちょっとのペース。集団は30人ほどだった。この流れを一転させたのが、世界歴代2位の2時間3分42秒を持つ優勝候補のキプサング。10〜15キロは14分11秒に急加速した。まだレースの態勢が整う前の出来事だった。
2位グループも14分30秒を切るラップタイム。遅れたとはいえ、藤原も14分50秒、中本も14分56秒でカバーした。メダル争いに加わるなら前のグループに食らい付かなければならないが、現実的な目標が入賞である以上、自分の感覚を無視して追うにはリスクが大きかった。
この場面での対応が後半に吉凶を生んだ。2時間4分台の選手さえ、ハーフを過ぎると次々に脱落していき、26.6キロでS・キプロティクとキルイに追いつかれたキプサングは35キロすぎの仕掛けで決め切れずに失速し、金メダルを逃した。藤原にもダメージが残った。
一方で、中本は前方のペース変化にのみ込まれなかった。のみ込まれていれば、15キロ地点で6秒差だった藤原に無理をしてでもすぐに追いついただろう。実際は藤原との差は20キロで17秒差になっていた。それが「自分のペース」だった。
反撃はハーフを通過してから。2キロ足らずで藤原のグループに追いついた。後半に本領を発揮する自分のスタイルへの自信、「タフなコースで暑くなれば、前から落ちてくる」という読みが中本をプッシュした。