バレー女子、経験と戦術に勝るブラジルに完敗=元日本代表の大山加奈が解説

構成:田中夕子

ブラジルの組織的なブロックシステムにエースの木村(右)も本領を発揮することはできなかった 【写真:ロイター/アフロ】

 ロンドン五輪のバレーボール女子準決勝、日本対ブラジルが9日(現地時間)に行われ、日本はブラジルに0−3(18−25、15−25、18−25)で敗れ、1976年モントリオール大会以来、36年ぶりの決勝進出を果たすことはできなかった。
 3位決定戦に回った日本は11日、84年ロサンゼルス大会以来、28年ぶりの銅メダルをかけて韓国と対戦する。

 この試合について、元日本代表の大山加奈さんに、勝負のポイント、見えた課題などについてお話をうかがった。

ブラジルの術中にはまり、主導権を握られる苦しい展開

 悪いところが一気に出てしまいましたね……。準決勝は完敗でした。

 まず、中国戦と比べて日本はサーブで攻め切れませんでした。おそらく8番のジャケリネ・カルバリョ選手を狙って崩すのが日本の作戦だったと思うのですが、そのサーブで攻め切れなかったために相手のレシーブも崩れず、常に安定したボールがセッターに返ってしまいました。そうなると、ブラジルは世界一のミドルブロッカーコンビが好きなように攻撃を決め、ミドルにブロックを引き寄せれば、今度はサイドが楽に決める。完全に主導権を握られる形になってしまいました。

 さらに試合の立ち上がりからブロックでの失点が続いたことも、日本が勢いに乗れなかった要因です。ブラジルのブロックももちろん素晴らしいのですが、中国戦に比べて竹下選手のトスがネットに近くなってしまったため、ブロッカーが待っている状態で打たなければならない状況が続きました。ブロッカーが目の前に見えているうえに、助走も十分に取り切れていないので、スパイカーは思い切り打ち切れない。ましてや相手は世界一のブロッカー陣です。これではさすがの木村(沙織=東レ)選手でも、決め切ることはできません。
 
 中国戦で木村選手、江畑(幸子=日立)選手があれだけ高い決定率を残しているので、当然相手は「サイドに注意しろ」と警戒します。中国は、どちらかと言うとブロックが組織的ではなく、個人対個人の勝負を挑むチームなので、アタッカーの技量でカバーできていたのですが、ブラジルのように個人ではなく組織として、きっちりしたブロックシステムに基づいたディフェンスをするチームは、マークする相手に対して常に2枚ブロックがついてきます。
 
 実際に準決勝のブラジルは、竹下(佳江=JT)選手がトスを上げる前から、サイドブロッカーだけでなく、ミドルブロッカーも木村選手、江畑選手が打つレフトの方向に寄って、日本の攻撃を待ち構えていました。アタッカーからすれば、空いているコースがほとんどなくなってしまうので、フェイントを織り交ぜて攻撃しましたが、レシーバーに拾われてしまうという手詰まり状態。完全にブラジルの作戦が上回っていました。

第3セットも出鼻をくじかれ、結果はストレート負け

 第1、2セットを完全に押し切られ、流れを変えたかった第3セットですが、1点目の取られ方がよくありませんでした。
 木村選手のサーブからブラジルの攻撃を竹下選手がレシーブ、リベロの佐野(優子=イトゥサチ(アゼルバイジャン)選手が木村選手のバックアタックにアンダーハンドでトスを上げました。ここまで日本が積極的に取り組んできたパターンなのですが、この攻撃に対して、ブラジルは3枚のブロッカーが完璧なタイミングでマーク、木村選手のバックアタックはブロックされてしまいました。

 一見すると、おそらくアンダーハンドのトスも、オーバーハンドのトスも、さほど変わりはないかもしれません。しかし、アタッカーからすればアンダーハンドのトスはボールの出てくる位置が低いので、一度、目線を下げなければなりません。そうすると、相手のブロッカーを見る余裕もなくなってしまいます。この場面でも、佐野選手が木村選手にトスを上げる動作に入った時点で、すでにブラジルのブロッカーは万全な状態で待っていました。何とか打開しようと木村選手も工夫していましたが、完全に3枚が待ち構えている状態ではさすがに厳しい。
 これから追い上げるぞ、と勢いに乗りたいところで出鼻をくじかれてしまった。日本にとっては、ダメージの大きな1点でした。

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著者プロフィール

1976年神奈川県生まれ。日本大学短期大学部生活文化学科卒業。なぜか栄養士免許を有する。神奈川新聞社でのアルバイトを経て、月刊トレーニングジャーナル編集部に勤務。2004年からフリーとしての活動を開始。高校時代に部活に所属したバレーボールを主に、レスリング、バスケットボール、高校野球なども取材。

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