日本の敗因は実力不足ではない=五輪女子マラソン総括

中尾義理

日本勢は北京に続いてまたしても完敗

日本勢は北京五輪に続いて2大会連続でメダル、入賞を逃した 【Getty Images】

 メダルを獲得してほしい。入賞してほしい。完走してほしい。マラソン日本代表に向けられる期待を大きい方から順番に並べると、ざっとこうなる。
 ロンドン五輪女子マラソンで日本代表は、木崎良子(ダイハツ)が2時間27分16秒で16位、尾崎好美(第一生命)が2時間27分43秒で19位、重友梨佐(天満屋)が2時間40分06秒で79位。3人とも完走を果たしたし、前半、重友や尾崎が先頭を走るシーンを作った。
 しかし、周回コースの2周目後半に全体がペースアップしてからは入賞争いの影も踏めず、完敗だった。

 バルセロナ&アトランタ五輪で有森裕子が銀&銅メダルを取り、シドニー五輪では高橋尚子、アテネ五輪では野口みずきがともに金メダルに輝いた。しかしどんな栄華も永遠には続かない。
 前回五輪の北京では中村友梨香の13位が最高順位という結果に終わった。
 少なくとも入賞への返り咲き。それがロンドン五輪の代表3人に託された願いだった。しかし、世界歴代2位の記録を持つ優勝候補が完走できず、マラソン界を席巻するケニア勢が、またも五輪女子マラソン金メダルを逃すというハードな五輪が、期待の前に立ちはだかった。

 3人はともに五輪初出場。個々に重要な経験を積んだ。しかし女子マラソンでくくった場合、日本は標準的な国になってしまった。そう言ってしまうと、厳しすぎるだろうか。

ゲラナが五輪新で金メダル

 スタート前に雨が降り始め、スタート時の気温は14度。夏季五輪とは思えない涼しさの中、118人の選手がロンドンの街に駆け出していった。五輪初採用の周回コースは事前から話題になり、特に、道幅が狭く、細かな起伏と延べ約100個所を数えるカーブが連続する旧市街“シティ”は「難コース」と評判を呼んだ。

 世界歴代2位の2時間18分20秒を持つリリア・ショブホワ(ロシア)、昨年世界陸上女子マラソン優勝のエドナ・キプラガト(ケニア)ら2時間20分未満の自己記録を持つ強豪も7人が顔をそろえていた。

 分かり切っていることだが、五輪はタイムより勝負。自己記録が2時間23分台の重友と尾崎、2時間26分台の木崎にチャンスが巡ってきてもおかしくなかった。

 先頭は5キロ17分20秒、10キロ34分46秒。後半勝負を意識した五輪らしいペースといえた。10キロで先頭集団から離れた重友も14キロで再び集団に戻り、15キロすぎに尾崎とともに先頭に立つ場面も。いったん離されても、また追いつける。先頭集団はまだリラックスしていた。

 状況が変わったのは2周目の“シティ”。それまで給水ポイントで前に出てくる以外ではほとんど目立たなかったケニア勢が仕掛けてきた。22キロ手前の給水を機に前方へシフトすると、24キロすぎにキプラガトが集団から飛び出した。

 先頭はケニア勢3人とエチオピア勢3人となり、25〜30キロは16分21秒に跳ね上がった。こうなると日本勢はきつい。19キロ付近で再び遅れた重友に続いて、尾崎と木崎も先頭グループから脱落した。

 東アフリカ勢の争いに割って入ったのが、タチアナ・ペトロワ・アルヒポワ(ロシア)。マラソンの自己ベストは2時間25分01秒だが、3000メートル障害で2007年大阪世界陸上2位、08年北京五輪4位の実績を持つ。異色の転向だが、残り1キロからのスパート勝負まで食らいついた。

 スパートがさえたのは、今年4月に2時間18分58秒をマークしているティキ・ゲラナ(エチオピア)。真っ先に仕掛けて、昨年世界陸上2位のプリスカ・ジェプトゥー(ケニア)とペトロワを置き去りにした。

 過去に日本の実業団のデンソーに所属していたことがあるというゲラナは、高橋尚子が持つ五輪記録を更新する2時間23分07秒で戴冠。後半のハーフは1時間9分台という素晴らしいペースアップを見せた。

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著者プロフィール

愛媛県出身。地方紙記者を4年務めた後、フリー記者。中学から大学まで競技した陸上競技をはじめスポーツ、アウトドア、旅紀行をテーマに取材・執筆する。

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