日本の敗因は実力不足ではない=五輪女子マラソン総括

中尾義理

差が出た“シティ”の走り

市街地コースを利用できなかった日本勢は、2周目で先頭集団から大きく引き離されてしまった 【写真:YUTAKA/アフロスポーツ】

 日本と世界の差は、意外にも“シティ”の走りに見て取れた。
 石畳や直角カーブ、両側に迫る建物、道幅最小3メートル。“シティ”はロンドンのコースの名物エリアだ。ストライド走法でマラソンの高速化に乗る海外勢にとっては窮屈だろう。むしろ小回りが利くピッチ走法で、消耗の少ないコース取りが期待できる日本勢に適している。そんな見立てがあった。

 実際どうだったのか。1周目、日本勢は集団から一歩引いたポジションを取った。まだ序盤、様子見の意図があったのかもしれない。2周目、木崎と尾崎は集団後方に何とか食らいつくが、重友は再び離されてしまった。いずれにせよ、“シティ”では3人とも積極的になれなかった。

 反対に、建物が両側に迫ることで体感的に増すスピード感を利用して、アフリカ勢や欧米勢が加速した。日本でもおなじみのマーラ・ヤマウチ(英国)やショブホワが“シティ”で途中棄権するハプニングもあったが、総じて海外勢は“シティ”を巧みに利用した。

 後半のペースアップについていけなくても、前から失速してくる選手を根気よく抜いていけば入賞にたどり着ける戦略が通用する時代ではなくなった。勝負に加わるには、やはり前方にいる必要がある。今回、入賞以上という目標を懸けた勝負が開幕した24キロすぎ。ケニア勢、エチオピア勢を追いかけようという選手の中に、日本勢は見当たらなかった。

日本勢の結果は実力不足が原因ではない

 日本代表の3人は力を出し切ったのか。重友と尾崎より自己記録で劣るペトロワの銅メダル、今年1月の大阪国際マラソンで重友に敗れたタチアナ・ガメラシュミルコ(ウクライナ)の5位入賞などを見せつけられると、日本勢でもやれたはずという思いがわく。

 五輪前に代表3人が合宿をともにするなど、これまでの日本流にはなかった強化策も試みた。そうした変化や試行錯誤はすぐには実らない。木崎は「自分の練習ではまだ通用しないんだなと痛感しました」と言い、尾崎は「どうしたら勝てるんだろうと考えながら練習してきましたが、かなわなくて、まだまだ考えないといけないなと思いました」と悔しげな表情を見せていた。

 日本陣営が味わったロンドンでの敗北感。悔しさへの反発を復権へとつなげなければならない。

<了>

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著者プロフィール

愛媛県出身。地方紙記者を4年務めた後、フリー記者。中学から大学まで競技した陸上競技をはじめスポーツ、アウトドア、旅紀行をテーマに取材・執筆する。

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