上位進出の鍵は木村の爆発力=元日本代表の大山加奈が解説

構成:田中夕子

全員が自分の役割をしっかり果たせているのがいまの日本だ 【Getty Images】

 ロンドン五輪のバレーボール女子1次リーグが5日(現地時間)、6試合行われ、A組の日本は英国を3−0(25−19、25−14、25−12)で下した。3勝2敗で勝ち点9の日本は、A組を3位で通過し、7日の準々決勝ではB組2位で北京五輪銅メダルの中国と対戦する。

 この試合について、元日本代表の大山加奈さんに、勝負のポイント、見えた課題などについてお話をうかがった。

イタリア、ロシアのどちらかに勝っておきたかった

 1次リーグ最終戦。日本は決勝リーグ進出がすでに決まった状態で、対するは開催国の英国。ランキング、実力的に劣る相手ですので、戦いにくい試合であったのは事実です。
 とはいえ、だからこそ、ただ勝つだけではなく、どう勝つかということが大事な一戦でもあります。そういった意味では、この最終戦はサーブ、スパイクに加えて、ブロックフォローや連係面でのミスが目立つ展開となり、やや反省が残る試合となってしまったのが残念でした。

 日本にとって、この1次リーグのヤマ場は第2戦からのイタリア、ドミニカ共和国、ロシアとの3連戦でした。
 イタリア戦は大友(愛=JT)選手のブロード攻撃が決まり、前半はイタリアのブロックをかく乱していました。特にサーブレシーブからサイドアウトを取る場面では積極的に仕掛けられていたのですが、ラリー中はやや打数が少なくなり、終盤は逆にイタリアのディフェンスに対応されてしまい、少しずつ流れがイタリアに傾き始めました。
 それでも1、2セットを取られた後も、竹下(佳江=JT)選手のトスがスピードばかりを重視するのではなく、特に木村(沙織=東レ)、江畑(幸子=日立)の両サイドに対してはややトスを高めに切り替え、攻撃がうまく回り始めたように見えました。
「これは行けるかもしれない」と思ったのですが、試合巧者のイタリアは効果的に軟打を織り交ぜ、その対応が間に合わないまま押し切られてしまったのがとても残念でした。

 タラ、レバの結果論になってしまいますが、1次リーグで敗れたイタリア、ロシアのどちらか1つにでも勝利していれば、チームには自信と勢いが加わっていたと思います。どちらも勝てない試合、内容ではなかっただけに悔いが残る試合となってしまいました。

いまの日本は誰が出てもそれぞれの役割を果たせる

 もちろん課題や反省ばかりではなく、この5試合を通して収穫もあります。
 1つ目は、ディグ(スパイクレシーブ)です。
 これまでの練習の成果もあるとは思いますが、リベロの佐野(優子=イトゥサチ/アゼルバイジャン)選手を中心に、新鍋(理沙=久光製薬)選手や木村選手らも、非常に手堅いレシーブで相手の攻撃を拾っています。特にロシア戦では、最終予選であれだけやられたガモワ選手のスパイクも、1本で簡単に決められるのではなく、粘り強いレシーブで応戦する日本らしい形に持ち込む場面も多々ありました。これは大きな収穫です。

 もう1つは、試合毎にメンバーが変わってもそれぞれの良さが発揮されている点です。
 代表的な例を挙げれば、サイドの江畑(幸子=日立)選手と迫田(さおり=東レ)選手です。どちらも攻撃型の選手ですが、スタメン出場、途中交代に関わらず、出た試合では十分に持ち味を発揮して、高い得点能力を示しています。
 セッター対角に山口(舞=岡山)選手が入れば、センターの井上(香織=デンソー)選手との絡みが生まれ、一方の新鍋選手も安定した守備とミスの少ない堅実なプレーで着実に得点チャンスを作り出しています。
 選手の立場からすると、メンバーが固定しないとやや不安を感じることもあるのですが、今の日本はむしろ逆。誰が出てもそれぞれの役割は果たせていることが、チームにとってプラスになっているようです。

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著者プロフィール

1976年神奈川県生まれ。日本大学短期大学部生活文化学科卒業。なぜか栄養士免許を有する。神奈川新聞社でのアルバイトを経て、月刊トレーニングジャーナル編集部に勤務。2004年からフリーとしての活動を開始。高校時代に部活に所属したバレーボールを主に、レスリング、バスケットボール、高校野球なども取材。

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