自らの存在感を改めて証明したイチロー
MLB日本開幕戦で、その存在感を改めて見せつけたイチロー 【Getty Images】
十分に日本を楽しんだ選手たち
「楽しかった」という声は、決して社交辞令ではない。
正遊撃手のブレンダン・ライアンは、滞在中の27日(米時間で自身30歳の誕生日となる26日)、六本木ヒルズでガールフレンドにプロポーズ。その夜、ホテルのバーでチームメートから祝福を受けた。
開幕戦で勝ち投手となったトム・ウィリヘルムセンは、皇居、原宿、渋谷を来日翌日に訪れ、阪神とアスレチックスの試合では、レフトスタンドで阪神ファンに混ざって応援をしていた。30日は、朝4時半に築地市場へ行き、そのあと、妊娠をしている奥さんのため、水天宮へ寄ってお守りを買い求めた。
ダスティン・アックリーは、初めて食べた“ヤキニク”が気に入り、「腹いっぱい食べた」と、うれしそうに語っていた。
選手それぞれが、十分に日本を楽しんだのである。
川崎は念願のロースター入り
例えば、川崎宗則は、開幕前日に念願のロースター(登録選手)入りを決め、「マリナーズの川崎」となった。
川崎自身もこのときは、ロビー・トンプソンベンチコーチによれば、「目に涙を浮かべていた」そうで、目頭を熱くしている。
それを祝福するイチローの言葉も熱かった。
「ムネの人生で最大のチャレンジでしたからねぇ、まずそれを勝ち取ること。それを達成したわけですから、すごいことだと思います。12年やってきて、あの立場からそれを奪い取ることがいかに難しいかを、僕はたくさん見てきているので」
招待選手としての挑戦。何の保証もない中で、川崎はひたむきに前を向いた。悲壮感をいっさい見せずに。だからこそ逆にイチローは胸を打たれ、「追い詰められてる、切羽詰った雰囲気があるのはむしろ僕だった」とも言っている。
さらにこの一言。
「自分のことで誇らしく思うことなんてない。誇らしく思うことは、人のことでっていうことがたまにあるんですけど、その一番上にくることかもしれない」
最大級の賛辞と言っていい。
ただ、同じような考え方をすれば、開幕戦でのイチローの活躍は、多くのファンにとって、他人のことで、一番上にくる誇らしいことだったといえそうだ。