イチロー、再び存在の証明へ=2012MLB日本開幕戦

木本大志

「僕より雑音があった人っていましたかね?」

重要なシーズンに臨むイチロー。日本開幕戦で良いスタートを切ることができるか 【Getty Images】

 もう何年も前のこと。イチローがこんなニュアンスの話をしたことがある。

 ある程度の実績を残しても、なかなか米国では、認められないところがある――と。

 そのとき、具体的なことに関しては言葉を濁したイチローだが、「アイツは自分の記録にしか興味がない」、「先頭打者なのに出塁率が低い」という嫉妬にも似た言葉は、今も聞こえる。

 そんな理不尽に対し、「過去、僕より雑音があった人っていましたかね? 日米含めて、いろいろありますからねえ」と自虐的に話したこともあるイチローだが、彼のキャリアを振り返るなら、そんな雑音をバットで封じてきた。圧倒的な実績を盾とした。


 そのイチローが今、新たな雑音の中にいる。

 昨季、年間安打が初めて200安打に届かず、184安打に終わった。打率も初めて3割を切り、2割7分2厘。オールスター出場も逃し、ゴールドグラブの選出からも漏れた。10年連続で積み重ねてきたものが、すべて途切れた。

 原因に関しては、「イチローも38歳。これまで何でもこなしてきたが、若くなることはできない」と年齢による衰えを示唆する声があり、逆風がこれまでになく強い。わずか1年前、「イチローは年齢を感じさせない」、「彼は体力面において、特別な部類な選手だ」などと評価されていたにも関わらず。

 イチローは、そういうステレイタイプ的な見方を嫌う。ならば今回、そんな視線にどう答えを出すのか。それが日本で幕を明ける2012年シーズンの一つの見どころとなる。イチローが再び、イチローであることの証明を求められる重要な1年のスタートが、奇しくも原点からの出発となるのである。

岩隈、川崎の加入が刺激となるか

 その開幕戦については、チームに岩隈久志、イチローを慕う川崎宗則が加入して、さらに見どころが増えた。

 岩隈に関しては、昨季9勝を挙げたマイケル・ピネダがヤンキースへトレードされたため、先発2番手の役割が期待されている。2番手ならば当然、日本の開幕シリーズで先発マウンドに立つことになるだろう。

 川崎に関しては、現時点ではマイナー契約だが、内野の控えとして開幕戦のメンバーに入ると見られている。キャンプの結果次第では、三塁のレギュラーを奪う可能性もある。そうなれば、彼がイチローの前後を打つことになりそう。

 彼らの加入そのものは、「イチローを良い意味で刺激するだろう」との見方もあり、契約のリスクも低いことから、チームへのプラス面も小さくない。

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