延岡学園が三冠達成の快挙 悔しい歴史からなる進化とは=高校選抜バスケ

小永吉陽子

尽誠学園の成長――“奇跡”ではない確かな“軌跡”

渡邊(写真)の生かし方を心得た尽誠学園は勝利を重ねて決勝まで勝ち上がった 【加藤よしお】

 福岡第一、洛南、沼津中央ら有力校を撃破し、8強、4強、決勝進出と初づくしで一気に壁を破った尽誠学園。その躍進ぶりは「ミラクル」と称されたが、ここ数年の道程をたどれば、決してフロックではない成長が見えた。

 ここ数年の全国大会では、藤枝明誠(静岡)や新潟商(新潟)、福岡大大濠(福岡)などの強豪の前に、逆転負けやあと一歩のところで涙を飲み続けてきた。チームの得点源であるガードの笠井は「今までびびって逃げていたチームを変えたかった」と、チャレンジャー精神を持って練習してきたことを明かす。これまで勝ち切れなかった答えを探し続けて全国大会に出て5年目。勉強熱心さで力をつけ始めていた色摩拓也コーチは「試合に負けてもルーズボールだけは負けない」スタイルを尽誠学園のカラーとし、「目標は日本一」だと明確に定めた。そこに、今年度の日本代表候補に選ばれた2年生の渡邊雄太(197センチ)という逸材が成長したことで、勝負するスピリットが生まれていたのだ。
 
 総体時は渡邊の生かし方が定まらなかった。スケールの大きなプレーこそ将来性を感じさせたが、中学時代までガードの経験があるだけに、状況に構わずボールに行きすぎていた反省があった。今大会は渡邊をインサイドの起点に置き、対戦相手によって内外角を使い分けることでチームが機能していた。これは大きな成長だった。ディフェンスでは1−2−2のゾーンディフェンスを武器に、我慢して耐えぬいて終盤にエース渡邊と笠井を中心に爆発する。この粘りに強豪校たちが屈していったのだ。

「周りから見たら奇跡に見えるかもしれないけれど、選手たちの練習の取り組みを見たら、なるべくしてなった結果。奇跡では終わらせられないほど、選手たちは成長しています」と誠実な口調で語った色摩コーチの言葉からは、どんなに険しくても目標を見失わずに、失敗しても地道に、着実に歩んできた努力の日々が浮かんで見えた。今大会もっとも成長し、全国に尽誠学園の名を轟かせた大会になった。

前橋育英の挑戦――一か八かの勝負を仕掛けた勇気

突破を見せる前橋育英の栗原。準々決勝で73−96で敗れたものの、延岡学園を一番あわてさせたのは前橋育英だった。 【加藤よしお】

 これまたここ数年、力を出し切れずに悔しい敗戦の歴史を繰り返してきた前橋育英。安西智和コーチは土浦日大高時代、エースとして総体優勝、ウインターカップ準優勝を果たした実績を持つ。「この素晴らしい舞台を選手たちにも味あわせたい」とみなぎる情熱を燃やしている。
 総体では初のベスト8入りしたものの、ソウ・シェリフ(201センチ)を擁する沼津中央の前になす術なく準々決勝で敗退している。今大会は夏の敗戦を生かし、延岡学園との準々決勝の対決では「金星か赤っ恥か」との宣言通り、奇襲作戦を用意して臨んだ。それが、息切れするほどの運動量多いディフェンスでかく乱し、いつもより2、3つ前のパスの段階でシュートを打ち切ることだった。テンポを変えたことでみずから狂って0−16の出足だったが、そこからフィニッシュを狙い続けて猛追したことで前半は43点のイーブン。最終スコアは73−96と開いたが、延岡学園をいちばん慌てさせたのは前橋育英だった。
「負けたのは悔しいけれど、選手たちと目標に向かえて楽しかった」と安西コーチ。やるべきことをやった挑戦の敗戦からは勇気をもらった。

 身体能力を持つ留学生擁するチームが有利であることは間違いない。留学生の存在に賛否両論の声も聞こえてくる。しかし、実際の全国大会の舞台では、応援している周囲が感じている以上に「留学生チームに勝ちたい」とチャレンジしているコーチや選手たちが、今や多くなっていることだけは伝えたい。
 高校生たちには目標実現のために何をすべきかを考えて行動してほしいし、コーチには目の前の勝利だけでなく、選手やチームを伸ばすために試行錯誤の挑戦をする勇気を持ってほしい。今大会はそうした切磋琢磨(せっさたくま)によって、夏からの進化を目の当たりにできた大会だった。

<了>

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著者プロフィール

スポーツライター。『月刊バスケットボール』『HOOP』編集部を経て、2002年よりフリーランスの記者となる。日本代表・トップリーグ・高校生・中学生などオールジャンルにわたってバスケットボールの現場を駆け回り、取材、執筆、本作りまでを手掛ける。

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