五輪への道が閉ざされた男子日本代表には何が足りなかったのか?=バスケ男子アジア選手権

松原貴実

日本は韓国に敗れ、五輪出場権を逃すと、総合7位という結果に終わった 【加藤よしお】

 9月15日〜25日まで中国・武漢において開催された男子バスケットボールの第26回FIBAアジア選手権大会は、決勝戦でヨルダンを70−69で下した中国が優勝を決め、同時に2012年ロンドン五輪出場権を獲得した。

 中国はエース・イ―・ジェンリェンを柱とした高さ(平均身長203センチ)と堅守のチーム。6月の東アジア選手権(中国・南京)には若手で構成されたBチームを送り出し、準決勝で日本に大逆転負けを喫する。しかし、この敗戦がカンフル剤になり、イ―・リー、ユン・スエらが急成長を見せ、チームの底上げに成功した。もちろん大会前から優勝候補の呼び声は高かったが、最大のライバルと目されたイラン(07年、09年大会の覇者)が準々決勝でヨルダンに敗れる波乱が起こると、「もはや中国の前に立ち塞がる敵はいない」「ロンドン五輪の切符は手にしたのも同然」と、優勝を楽観するファンの声が会場にあふれた。
 
 しかし、言うまでもなく今のアジアを勝ち抜くことはそんなに容易なことではない。逆に言えば、スーパースターのサマッド・ニックハ・バハラミ率いるイランですら足元をすくわれる舞台なのだ。ベスト4に残った韓国、ヨルダン、フィリピンは、スケールという点では中国に劣るものの、粘りと勝ち気と勢いという共通の武器を持ち、それを全面に押し出した準決勝(ヨルダン対フィリピン、中国対韓国)はともに白熱戦となった。特にロースコアのせめぎ合いとなった中国対韓国は見ていて息苦しくなるほどの緊張感にあふれ、両者の勝利に対する執念がひしひしと伝わってきた。

足りなかった苦しいときの踏ん張りと立て直す力

田臥の抜けた穴を埋めることになった柏木(写真)だったが、スタート間もなく肉離れのため戦線離脱となった 【加藤よしお】

 そんな中、Cグループ予選ラウンドを1位で通過した日本だったが、2次ラウンドでフィリピンに逆転負け(76―83)を喫すと、続く中国戦では「まだあきらめてはいない。中国に勝つことでトップ2になる望みは残っている」というウイスマンHC(ヘッドコーチ)の前向きな発言とは裏腹に本気で勝つに行くという気迫が感じられないまま58−84で大敗した。

 フィリピン戦では16/28というフリースローの確率の悪さが目立ち、それが敗因の一つとして挙げられたが、本当の意味の敗因はこうしたミスが重なり流れが傾きかけた時、踏ん張り、立て直す力の不足。その力は日本が自らの武器として挙げていた『プレッシャーディフェンス』から生まれるはずだったが、相手に喰らいついていく執念がなければそのカードは切り札にはならない。

 ベスト4進出のラストチャンスとなった韓国との準々決勝では立ち上がりから相手の激しいディフェンスに圧倒され67−86で完敗。この時点で日本のベスト4進出の道は絶たれ、ロンドン五輪出場の夢も完全に消え去った。
 ならばイランを倒してせめて5位に……と臨んだ順位決定戦では、そのイランの前に対戦したレバノンに逆転負け(80−78)。第4クォーター終盤に11点リードを覆されたこの一戦は残り0.7秒に得たフリースローで同点に追いつくチャンスがあったが、それを決められずにゲームセット。だが、ここでも真の問題はフリースローの失敗ではなく、それ以前にレバノンの追い上げムードを断ち切る対応策を何ら講じることができなかった点にある。78−73から78−80と逆転されるまでの2分間、コートの上にあったのは立ち向かうことを忘れた日本の姿だった。

 最終戦のチャイニーズ・タイペイにようやく勝利(81−72)したものの、結果は当面の目標だったベスト4入りからは遠く離れた7位に終わった。

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著者プロフィール

大学時代からライターの仕事を始め、月刊バスケットボールでは創刊時よりレギュラーページを持つ。シーズン中は毎週必ずどこかの試合会場に出没。バスケット以外の分野での執筆も多く、94『赤ちゃんの歌』作詞コンクールでは内閣総理大臣賞受賞。

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