【柏レイソル】"健闘"に甘んじることなく確固たる実力を「2024Reysol Report Vol.6」

柏レイソル
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 1試合消化の少ないレイソルは、ここまでリーグ戦10試合を終えて3勝5分2敗、勝点14の13位という順位になっている。直近のFC町田ゼルビア戦が0−2と、内容的にも課題の多い試合での敗戦となったため、心象としては良くないかもしれないが、昨年の同じ時期、10試合終了時で1勝3分5敗、14失点という苦しい状況と比べれば、格段にチームは前進している。

 ゼルビア戦の完敗は残念ではあるが、だからといって悲観はしていない。なぜなら、今季の序盤戦10試合において、チームはポジティブな面を数多く見せてくれたからだ。

昨年17位から予想を覆す好スタートを決めた2024シーズン 【©️KASHIWA REYSOL】

 そもそもレイソルは、昨季はリーグ17位で、苦しんだ末に辛くも残留を果たしたチームである。昨年夏以降は守備の安定こそ見られたが、それでもビルドアップ、攻撃パターン、トランジション、試合の終わらせ方など課題は山積だった。これに関しては、昨年の途中からは結果に対して割り切り、勝点を少しずつでも積み上げるために「現実的なサッカーに振った」(井原正巳監督)という理由がある。昨年の守備戦術を継続しながら、今季は始動時からその数多き課題の克服に着手してきた。

 その課題が短期間で一気に改善され、戦術的な浸透度が増し、選手個々のクオリティーが向上して、開幕から上位戦線を突っ走れるならばそれは理想的だが、「ローマは一日にして成らず」、「千里の道も一歩から」といった諺があるとおり、強いチームになるためには、それ相応の時間と地道な積み上げが必要となる。
 個人的にはゼルビア戦の敗戦よりも、ちばぎんカップの不甲斐ないパフォーマンスと、開幕の京都サンガF.C.戦での土壇場での失点には昨年からの成長が見られず、憤りと失望を感じたものだった。

ちばぎんカップでは背後をとられ若さを見せた関根大輝。その後見事な順応で五輪出場権獲得にも貢献 【©️KASHIWA REYSOL】

 しかしその後、チームは少しずつではあるが、昨季とは違う姿を見せてくれるようにはなった。
 第2節のヴィッセル神戸戦。これまでは決してスムーズにできなかったビルドアップとポゼッションで昨年のJ1王者を押し込み、敵地で今季初勝利を飾った。そのヴィッセル戦では試合の終わらせ方に課題が残ったが、第3節のジュビロ磐田戦では、開幕のサンガ戦で失点につながるフリーキックを与えてしまった土屋巧、ヴィッセル戦で不用意なロストでピンチを招いた山本桜大、二人の若手がその反省を活かした。

リーダーシップが光る犬飼智也。神戸戦勝利でチームに自信を植えつけた 【©️KASHIWA REYSOL】

 第4節名古屋グランパス戦の今季初黒星後は、勝ちきれない試合が続いたとはいえ、昨年のように連敗街道を突き進むようなことはなく、アルビレックス新潟戦では14本、セレッソ大阪戦では11本、サガン鳥栖戦では15本と、引き分けた試合の多くは二桁シュートを放ち、決まってもおかしくはない決定機を数多く作り出している。ここでは決定力不足が深刻であるのは確かだ。バリエーションや崩しに関しても、もちろん課題は残る。ただ、細谷真大とサヴィオの個の力に委ねる傾向のあった昨年と比べれば、チームで意図的にチャンスを生み出す部分において改善が見られていることも事実である。

 しかし、このままで良いとも思っていない。試合内容が良くても、勝ちきれない試合が続けば、それだけ勝点を取りこぼし、結局は昨年同様下位での争いに巻き込まれてしまうだろう。しかも最近の試合では、試合序盤での失点で試合展開を難しくしてしまい、特にセットプレー絡みの失点が続いている。
 勝っても負けても、必ず課題はある。重要なのは、その課題を次に向けて改善できるかどうか。その地道な積み上げが、結果的にチーム力を向上させていくのである。

【文】柏レイソルオフィシャルライター:鈴木潤

目下の課題は勝ち切るための得点力。木下康介に続く、武藤雄樹(写真)、山本桜大らの奮起を待ちたい 【©️KASHIWA REYSOL】

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著者プロフィール

1940年に母体となる日立製作所サッカー部が創部、1995年にJリーグに参戦。1999年ナビスコカップでクラブ史上初タイトルを獲得。ネルシーニョ監督のもと、2010~2011年には史上初となるJ2優勝→J1昇格即優勝を成し遂げる。さらに2012年に天皇杯、2013年に2度目のナビスコカップ制覇。ホームタウンエリアは、柏市、野田市、流山市、我孫子市、松戸市、鎌ケ谷市、印西市、白井市の東葛8市。ホームスタジアムは、柏市日立台の「三協フロンテア柏スタジアム」。主な輩出選手は、明神智和、酒井宏樹、中山雄太。

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