香川、内田、長谷部ら明暗分かれたプレシーズン=ドイツでの戦いに挑む日本人選手、それぞれの立ち位置

ミムラユウスケ

高まりつつある香川とギュンドガンの連係

新加入ギュンドガンとの連係も徐々に高まっており、香川(写真)にとっては良い流れで開幕を迎えられそうだ 【Bongarts/Getty Images】

 ドルトムントの圧倒的な強さが目立ったシーズンを経て、5日に2011−12シーズンのブンデスリーガが幕を開ける。全18チームのうちちょうど半分の9チームに日本人が所属しており、昨季からのブームは今季も変わらない。

 王者ドルトムントの香川真司はアジアカップで負傷する前、つまり昨シーズンの前半戦と同じようにトップ下の位置でプレーを見せている。昨季のチームの心臓として中盤の底から攻撃を操っていたシャヒンがレアル・マドリーへ移籍したために、チームは新たな攻撃の形を模索している。代わりに入るギュンドガンは前任者とは異なり、パスをさばくだけではなく、自らも積極的に前へと飛び出していく選手だ。クロップ監督はシャヒンの抜けた穴を、ギュンドガンに埋めさせるのではなく、中盤の5人のMFの連動によって埋めようとしている。

 もっとも、すんなりと課題が解消されるわけでもない。7月23日に行われたシャルケとのドイツスーパーカップ(PK戦でシャルケが勝利)のあと、香川はギュンドガンとの連係について、「ちょっとまだ、タイミングがつかめていない部分がある」と話していた。

 翌週に行われたドイツカップのサントハウゼン戦、香川はハーフタイムにギュンドガンと話をしている。
「ギュンドガンは前半から高い位置をとってきて、それは良いことでもあるんだけど、自分と(ポジションが)かぶっている場面も何回かあったので。ちょっと前に来すぎていて、自分のスペースがなかったから、タイミングを見てくれというふうに言ったら、本人も分かっていた」

 後半から、2人の関係は改善されていく。後半11分には、2人の関係が良くなったことを象徴するシーンがあった。中盤のやや低い位置でボールを持った香川が、ペナルティーエリア付近まで上がっていたギュンドガンにパスを出した。香川は勢いを止めずに、ギュンドガンを追い抜いてペナルティーエリア内へと侵入。そこでギュンドガンからのパスを受けて、最後は右足でゴールネットを揺らしたのだ。香川にとって練習試合も含めて約1カ月ぶりのゴールが、ギュンドガンとのワンツーのパスから生まれたのだ。

「良い形でアシストしてくれた」と香川も語ったシーンで、プレシーズン中から「試合をこなしていくうちに関係は良くなっていく」と言い続けてきたとおりの結果が得られた。「すべてにおいて、まだまだ上がっていけると思う」と香川自身は語っており、5日に行われるハンブルガーSVとの開幕戦に向けて良い流れが生まれつつある。

厳しい状況にも一喜一憂しない内田

 ドルトムントのライバル、シャルケ04でプレーする内田篤人は厳しい状況に置かれている。2部のアーヘンからやってきたヘーガーに、現時点ではレギュラーポジションを奪われているからだ。本来は中盤の選手ながら、186センチと長身で、足元の技術に定評のあるライバルが、プレシーズン中にラングニック監督の心をつかんだ。内田は淡々と、現状について語る。
「監督も自分のプレーは分かってるんで。去年から一緒にやってるわけだし、自分の調子も上がってくればいいんじゃないかな」

 ライバルのヘーガーについては、「良い選手」だと認めながらも、「当初、思ってた以上にヘーガーは良い選手なのか」と記者に問われたときは、表情を変えずにこう言い放った。
「いや、それはないかな」

 現時点では控えに甘んじており、状況が芳しいとは言えないが、一喜一憂するさまを見せないのは、不動の右サイドバックとして昨季のチャンピオンズリーグ(CL)でベスト4に進出した当時から変わらないものだ。
「危機感はあるけど、焦りはないかな。まあ、危機感は常にあるものだから」

 内田はこれからも腐ることなく、アピールを続けていくつもりだ。

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著者プロフィール

金子達仁氏のホームページで募集されていた、ドイツW杯の開幕前と大会期間中にヨーロッパをキャンピングカーで周る旅の運転手に応募し、合格。帰国後に金子氏・戸塚啓氏・木崎伸也氏が取り組んだ「敗因と」(光文社刊)の制作の手伝いのかたわら、2006年ライターとして活動をスタートした。そして2009年より再びドイツへ。Twitter ID:yusukeMimura

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