香川、内田、長谷部ら明暗分かれたプレシーズン=ドイツでの戦いに挑む日本人選手、それぞれの立ち位置
「良い準備ができた」と手ごたえを感じている長谷部
長谷部は「良い準備ができた」と、新シーズンへ向け手ごたえを感じている 【Bongarts/Getty Images】
ただ、長谷部は今、充実した時間を過ごしている。プレシーズン期間中は主に左MFとしてプレー。7月29日のドイツカップのライプツィヒ戦ではトップ下で先発出場を果たし、試合途中から右MFとしてプレーした。そして、今週行われたゲーム形式のトレーニングでは、主力組の右サイドバックを任された。トレーニングを終えた後には、こんな感想を口にしていた。
「今日はびっくり……いや、びっくりはしないかな、もはやね(笑)。ポジションとかはいろいろ変わるだろうけど、その中でも自分がどれだけやれるかっていうのが今は楽しみ」
長谷部が充実した時間を過ごしているのは、一目で分かる。厳しいトレーニングキャンプのおかげで、焼けた素肌。背筋をぴんと伸ばし、記者の質問にもよどみなく答えが出てくるのだ。
実は過去2年、長谷部にとってプレシーズンは鬼門だった。2シーズン前にはキャンプ最終日に行われた練習試合で、昨季は開幕を約2週間後に控えた練習試合で共に負傷。開幕戦をピッチの上で迎えることはできなかったのだ。過去2年との違いはどこにあるのか。
「今シーズンは良い準備ができたかなという感覚が自分の中ではあるんですよね。合宿でも相当追い込めたし。その中で、高い意識を持ってやれたので。自分の中で、またひとつ、何かを変えられたという手ごたえがあるんです」
過去2シーズンのけがはいずれも練習試合中のアクシデントではあったのだが、長谷部は明らかな変化をかみしめている。
「変わったのは気持ちの部分かな。練習が厳しいから、監督にやらされている感を出していったら、どうしてもね……。やっぱり、気持ちと体って同調しているから。厳しい練習も自分のためにやっていると思ったら、体もしっかりできてくるという感じ。今はポジティブなマインドと、ポジティブな体があるってイメージかな」
チームの目標は4位以上に入り、CLの出場権を獲得すること。その目標を達成するための中心選手として、今シーズンの長谷部は走り続けていくことになる。
小さなきっかけで状況も大きく変わる
岡崎と同時期に加入した細貝萌と槙野智章は、やや苦しい状況に置かれている。細貝は7月30日の試合ではベンチ入りしたものの、出場機会はなし。槙野は7月31日の試合の遠征メンバーから外れてしまった。
今季からバイエルンでプレーする宇佐美貴史は、直前のアウディカップで好プレーを見せたものの、8月1日のブラウンシュバイク戦ではベンチ入りメンバーから外れた。ハインケス監督は遠征に19人の選手を連れて行き、その中から18人を選ぶことにしていた。ロッベンとリベリーを負傷で欠いていたために、公式戦初出場も期待されていたが、それはかなわず。試合後には「お疲れ様でした」と残し、宇佐美は会場を後にした。ブンデスリーガで最も層の厚いチームであるため、すべてが順調にいくわけではない。むしろ、その中でいかにしてレギュラー争いに食い込んでいくのか。真価が問われるのはこれからだ。
なお、フライブルクの矢野貴章は負傷により、ドイツカップは欠場している。
開幕を前にして、各選手の置かれた立場はさまざまだが、小さなきっかけで状況は大きく変わる。例えば、昨季終盤戦の活躍を見れば、内田がベンチを温める日が来ると想像した人はほとんどいなかったはずだし、残留争いに苦しんだ長谷部が充実した表情を浮かべるようになると確信を抱いていた人も多くはなかっただろう。
内田と同様、一喜一憂することなく、ブンデスリーガにおける今後の日本人選手の戦いぶりに注目していこうではないか。
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