７月３日午前１０時前（現地時間、以下同）、クラブハウスに入ると、ブランドン・リーグがしきりに携帯をいじっていた。次々に祝福のメールが入っているようで、やたら着信音が鳴る。返信しているようだが、追いつかないようでもあった。

　その３０分ほど前、彼は１２日にアリゾナ州フェニックスで行われる今年のオールスターゲームに選出された。

　本人いわく、「選ばれるとは思っていなかった」そう。シアトルの時間では午前９時から『オールスター・セレクションショー』のテレビ中継が始まり、それをクラブハウスで見ている選手もいたが、リーグは「ダイニングで朝食を取っていてテレビを見ていなかった」という。
　よって知らされたのは、エリック・ウェッジ監督に、「部屋に来てくれ」と呼ばれたとき。「まさかと思った」。その言葉を口にしてから、リーグの顔いっぱいに笑みが広がった。

　マリナーズからはフェリックス・ヘルナンデスも選ばれたが、彼が球場に来たのは午前１１時前。平静を装っていたが、やがてメディアに囲まれると、顔を紅潮させた。
「ホームラン競走を見るのが楽しみ」

　ヘルナンデスは２００９年に次いで２度目。リーグは、初のオールスター出場となる。

『オールスター・セレクションショー』では、アメリカンリーグの先発選手、ナショナルリーグの先発選手、そしてア・リーグ、ナ・リーグの控えの順で発表があったが、残念ながらイチローの名前は、最終投票のメンバーにも選ばれず、ついに呼ばれなかった。

　ア・リーグ外野手のオールスター出場選手は以下の通り。

ホセ・バティスタ（ブルージェイズ）
カーティス・グランダーソン（ヤンキース）
ジョシュ・ハミルトン（レンジャーズ）
マイケル・カダイアー（ツインズ）
ジャコビー・エルズベリー（レッドソックス）
マット・ジョイス（レイズ）
カルロス・クエンティン（ホワイトソックス）

　ファン投票では、中間発表の度に順位を落とす状況だったので、イチローがオールスターに出場するとしたら、監督、コーチ、各チームのゼネラルマネージャーも参加する選手間投票、もしくは監督推薦が可能性として残されていた。だが、思ったほど選手間投票でも、票を集められなかった――というか、イチローは圏外だったため、票数が分からない。少なくともトップ６には入れなかった。
　その瞬間、イチローの連続出場が現役では最長だった１０年で途切れている。

　イチローはそのことに直接触れず、静かに言った。
「今年もたくさん投票していただいたことに、お礼を言いたいです」