注目の世界体操代表争い 最有力は内村=NHK杯見どころ

日本体操協会:遠藤幸一

世界選手権の代表選考会となるNHK杯。全日本選手権覇者の内村航平は代表最有力候補だ 【写真は共同】

 第50回の記念になる体操のNHK杯が6月11、12日の2日間、代々木第一体育館において開催される。

 恒例となっている代表決定競技会の位置づけも東京で初めて行われる世界選手権の代表選考が加えられていることで意義深い。
 東日本大震災の影響により、一時は大会返上もささやかれていたが、関係者の真摯(しんし)な取り組みにより開催確定。地元での世界選手権は一生に一度めぐってくるかどうかわからないビッグイベントであり、ホームで戦う快感を味わえるのは誰なのか。約束された感動の日本代表争いから目が離せない。

 さて、その予想こそがNHK杯の見どころとなるが、4月に開催された全日本選手権での成績が持ち点となるため、その結果をみて感じた注目点を挙げてみたい。

男子は個人総合3位と24位争いが鍵

 男子は個人総合3位までの選手と種目別ポイント(種目別上位3位までに与えられるポイント)による選考となる。ただし、特徴的なのが個人総合24位までに入らないとポイント対象とならない点。つまり、6月12日の演技で24位までに入いらなければポイント対象とならないため、思わぬ大どんでん返しが待ちうけているかもしれない。
 自分がポイントを獲得するために必要な選手が24位までにいるのかどうかが鍵だ。

 現在、最有力なのは世界選手権個人総合2連覇中の内村航平(KONAMI)。昨年は肩の痛みに悩まされ、厳しい戦いを強いられたがそれを克服。
 4月の全日本選手権ではあん馬でD難度の下向き転向移動を加えたり、跳馬でヨー2(前転とび前方伸身宙返り2回半ひねり、Dスコア7.0)を成功させるなど、さらに進化する演技を披露し、頼もしさをアピールした。
 難しい技をいとも簡単にこなす技さばきは彼の努力と天性の感覚によるものだが、それを支えているのが、体操の本質を楽しんでいる姿勢だと思う。彼の演技を見ていると驚嘆とともに楽しさが伝わってくる。

 そして素晴らしい着地。自分の身体をコントロールできている表現としてもっとも美しく、完成度をアピールできる着地を止める確率が高く、いまや彼の見どころの一つになっている。
 会場全体が注目している中、彼の着地が止まった時に沸き上がるどよめきと歓声はぜひ会場で味わってもらいたいポイントだ。

 次いで、小林研也(KONAMI)、田中和仁(徳洲会体操クラブ)、山室光史(KONAMI)が個人総合争いで優位に立っている。ただし、落下などの大過失は1点の減点があるため気を抜けない。
 そして個人総合3位までに入らなければ種目別ポイントによる戦いになるため、代表入りには、得意種目の強化を個人総合強化につなげる方法が得策だ。

 上記の選手のほかにNHK杯出場36名を対象に種目別ポイントに絡んできそうな主な選手を挙げる。
・加藤凌平(埼玉栄高、ゆか)
・沖口誠(KONAMI、ゆか・つり輪・跳馬)
・出口諒財(日体大、あん馬)
・中島立貴(KONAMI、あん馬)
・桑原俊(徳洲会体操クラブ、平行棒・鉄棒)
・野々村笙吾(市船橋高、平行棒)
・田中佑典(順大、平行棒・鉄棒)

女子は個人総合8位までが代表に

女子では全日本選手権で5位に入った寺本明日香に注目 【Photo:築田純/アフロスポーツ】

 女子は個人総合8位までが代表となる。本大会に出場するのは6名だが、10月の大会までに間があるため、地元の利を生かして、大会直前でのエントリー選手変更可能と言う規則を活用する。また、団体総合8位までに与えられるロンドン五輪団体出場権獲得を目指すことになる。

 男子は全日本選手権の2日間総得点の半分が持ち点となるのに対し、女子は今回、半分にせず総得点をそのまま持ち点とする。
 従って、全日本選手権で6連覇を達成した鶴見虹子(朝日生命)は、2位の田中理恵(日体大大学院)に1.350の差を、さらにその田中と3位の新竹優子(羽衣国際大)との間には2.850の差があり、鶴見、田中両選手は代表争いの非常にいい位置でNHK杯を迎えることができる。

 それに対して、ボーダーとなる8位笹田夏実(大泉スワロー体育クラブ)と9位美濃部ゆう(朝日生命)の差はわずか0.050。上位選手の戦いとともに、代表になるかならないかの選手の動向からも目が離せない。

 なお、全日本選手権で6位に入った飯塚友海(朝日生命)と5位の寺本明日香(レジックスポーツ)が新しい顔として台頭してきた。
 特に寺本は今年シニアデビューとなる1995年生まれの選手。Dスコア(演技の難度点)の合計では出場選手中もっとも高く、注目される。

<了>
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著者プロフィール

1961年東京生まれ。日本体操協会常務理事・総務委員長。体操の金メダリストである父親を持つものの、小学、中学はサッカーに明け暮れていた。高校で体操に転身。国際ルールのイラストレーターとして世界中の体操関係者にその名を知られている。

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