西武の新星・浅村、ブレークの理由

首脳陣は「予測していた」今季のブレーク

オープン戦打率トップ、4月は3割9分2厘の高打率を残して一躍ブレークした西武の浅村
オープン戦打率トップ、4月は3割9分2厘の高打率を残して一躍ブレークした西武の浅村【写真は共同】

 派手なデビューだった。ファーストストライクから思い切りバットを振る豪快なバッティングスタイルで、オープン戦打率(4割4分1厘)は12球団トップ。開幕後もその勢いは衰えることなく、4月は3割9分2厘の高打率で、内川聖一(福岡ソフトバンク)と月間MVPを争った。昨シーズンの1軍出場はわずか30試合。これまでほとんど無名に近かった埼玉西武の浅村栄斗(あさむら・ひでと)という名前が一躍、野球ファンの間で注目されるようになった。


 ただし、今シーズンの浅村のブレークについて首脳陣に話を聞くと、「予測していた」という答えが即座に返ってくる。鈴木康友内野守備走塁コーチは言う。

「入団したときから守備のうまさはずば抜けていました。おそらく今、12球団で最も動きのいい野手だと思う。間違いなく将来はライオンズの中心選手になるでしょう。渡辺久信監督も本当は昨年から試合に出したかったんだろうけど、なんせ守る場所がなかったからね」

 浅村の本来のポジションはショート。2軍ではサード、セカンドも守った。しかし、埼玉西武の内野陣を見渡すとショートにはチームリーダーで5年連続3割以上の打率を残す中島裕之がいる。セカンドには4年連続盗塁王の片岡易之、そしてサードは08年、09年に本塁打王に輝いたおかわり君こと中村剛也。そうそうたるメンバーばかりで、入り込む余地がなかった。


 実際、浅村は昨シーズンもオープン戦で結果を残し、開幕1軍入りを果たしながらも4月下旬には2軍に降格となった。出場機会のない1軍にいるよりは、2軍で実戦経験を――。そんな首脳陣の方針からだった。

 今シーズンは苦肉の策としてファーストにコンバート。その転向が功を奏してスタメンに定着している。

「“修正能力”に長けた選手」

 4月に高打率を残したバッティングに関して、浅村はこう語る。

「今シーズンの序盤、良かったと思うのは積極的にバットが振れていたところ。ファーストストライクから思い切りバットを振っていくのが自分の長所だと思っているので、それを変えずにプレーできたのが良い成績につながったんじゃないでしょうか。でも、今のところはうまくいっているというだけ。何度も対戦したらどうなるかは分かりません」


 デビューしたての選手には過去の対戦データがない。対戦カードがひと回り、ふた回りして浅村の分析材料が増えれば、打撃傾向があらわになる。当然だが、相手バッテリーは配球を工夫して、そのバットを封じようとする。ただし、熊澤とおる打撃コーチは言う。

「浅村に限っては心配ないと思いますね。彼は駆け引きで勝負するタイプの打者じゃないんです。相手がどう攻めてくるかより、どれだけ自分のフォームで、自分の間合いで打てるかというタイプのバッター。彼が万全の状態で試合に出ることができれば、データはあまり影響がないと思います。それに浅村は、たとえバッティングを崩されても、元の自分本来のバッティングに戻すまでの“修正能力”に長けた選手なんです」

高い目標を掲げる20歳「自分との戦い」

 5月、交流戦が始まり、確かに序盤の勢いは薄れたが、それでもまだ入団3年目。やはり今後が期待できる存在であることに違いはない。

「最初が良くても1シーズン通じて結果が出ないとダメだと思っています。課題は全部ですね。もっとヒットも打ちたいし、守備も完ぺきにしたい」


 思えば2011年、埼玉西武にとっては苦しいシーズンの幕開けだった。節電対策で西武ドームが使えず、4月の間、チームは西日本を転々とした。打撃が爆発すれば投手陣が打たれ、投手が抑えれば打撃が沈黙する。渡辺監督が就任して以来、最多となる8つの借金生活も経験した。


 そんな中、浅村の活躍はチームにとって、そして声援を送るファンにとって、特別に明るい材料だった。失敗を恐れず、並み居る好投手に果敢に挑んでいく20歳の姿は、胸が躍る心地よさを思い出させてくれた。


「長いシーズン中にはきっと、調子が良いときも悪いときもある。自分との戦いになると思います。でも、とにかく精神的に引きずらないようにやっていこうと思っています」

 フル出場、規定打席到達、3割という高い目標を掲げている新星にこれからも注目だ。


<了>

市川忍

フリーランスライター/「Number」(文藝春秋)、「Sportiva」(集英社)などで執筆。プロ野球、男子バレーボールを中心に活動中。

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