森安洋文、オーストラリアでつかんだ夢の舞台=ACLで鹿島と対戦へ

山賀あい子

チームの主力へとステップアップ

人生初となるACLの舞台では、初戦の水原三星戦でスタメン出場。果敢なプレーを見せた 【Getty Images】

 ディフェンディングチャンピオンとして臨んだ10−11シーズン、シドニーFCは開幕早々にけが人が続出し、苦しいスタートとなった。このため、「まず試合に出る、そして出られたらコンスタントに出続ける」という目標を掲げていた森安には、早い段階でチャンスが巡ってきた。第5節のアデレード・ユナイテッド戦で途中出場を果たすと、その後スタメン起用されるようになる。今年1月3日のニューカッスル・ジェッツ戦では、初ゴールを記録。5連敗していたチームを救い、その活躍ぶりが地元メディアに取り上げられた。

 チームは結局、11チーム中9位に終わり、今季のファイナルシリーズ進出を逃した。だが、そのおかげでリーグ最終節からACL初戦まで3週間の時間ができ、ACLに向けて十分な準備を行うことが可能となる。メンバーは07年大会以来となる2度目のACLの舞台で、リーグ惨敗の借りを返そうと闘志を燃やし始めた。

 3月2日にホームで行われた水原三星ブルーウィングス(韓国)との初戦では、主将のMFテリー・マックフリンが前半32分に一発退場を受けて10人での戦いを強いられるも、スコアレスドローに持ち込んで窮地を脱した。「ずっとテレビで見ていた大会なので、自分が出場するなど想像もしていなかった」と話す森安も、スタメンで水原三星戦に出場。後半32分にFWマーク・ブリッジと交代するまで、人生初のACLの舞台で果敢にプレーした。

成功の陰に「運」と並々ならぬ努力

 ワーキングホリデービザを片手に1人でオーストラリアにやって来てから、エバートンとの試合、プロ契約、スターティングメンバーとしてのポジション確立、ACL出場と、森安はサッカー選手ならば誰もがあこがれる経験を1年足らずの間でやってのけた。

「この25年間、運がなかったし、これまでサッカーのために転々としてきた。(三菱水島の廃部を受けて)本当にサッカーを辞めようと思っていたので、最後の覚悟を持って、『これでだめなら本当にあきらめよう』という思いでオーストラリアにやって来た。こういう形になれたのは、本当に運があったと思う」

 自身の成功を森安は「運」という言葉で示した。はたから見れば、森安の今季は「Happy−go−lucky(運任せ)」ととらえられるかもしれない。だが、数々の夢を実現させたその陰には、確固たる信念と並々ならぬ努力があったのは言うまでもない。

 ACLでのプレー次第では、Jリーグのクラブへの逆輸入という道も開かれるかもしれない。しかし、森安は「Jでプレーしたことがないので、機会があればプレーしてみたいとは思う。ACLで活躍すれば何が起こるか分からない。でもその前に、シドニーFCのためにいいプレーをして、チームを勝たせることが先決。まずはそれに集中したい」と語る。

「グループには各国の強豪がいて、シドニーFCは格下に見られているかもしれないけど、最後まで戦い抜いて予選突破を果たしたい」と森安は意気込む。5月中旬まで続くACLのグループリーグはまだ半ばに差し掛かったところ。南半球のオーストラリアで始まった森安のサクセスストーリーにはまだ続編がありそうだ。

<了>

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