322日ぶりの出場へ。変化のきっかけは早朝30分の基礎練習
リザーブに、昨季まで共同バイスキャプテンを務めていた男の名が戻ってきた。
山本昌太。
気付けば、ロトアヘア アマナキ大洋とともにバックス陣最年長選手になったベテランスクラムハーフは、火曜日の練習終わり、自主練習に打ち込む仲間を見ながら、ひとつに収まり切らぬ種類の表情を浮かべつぶやいた。
「体はラグビーをできる状態なのに、こんなにも長いことゲームタイムをもらえないことが初めてでした」
開幕の1カ月ほど前、全治数週間のけがを負った。負傷自体はすぐに治ったが、しかし開幕直前の練習離脱は、今季新たなヘッドコーチを迎えたチームにとって大きな出遅れとなった。
開幕から8試合連続のメンバー外。これまでに経験したことのない感情が湧き出た。
「メンバーだろうがメンバー外だろうが、やることは変わらないと頭では分かっています。それでもどこかモヤモヤする日々。そのころのパフォーマンスを動画で振り返っても、プレーが全然違いました」
切り替えるきっかけをくれたのは、同じポジションのTJ・ペレナラだった。ペレナラが独自に行う『スクラムハーフ向けパスセッション』に参加しないか、と声が掛かったのだ。
「基本的なパスをさまざまなバリエーションで投げる、30分ほどの基礎練習です」
週に3度、世界的な捌き手とともに早朝練習を続けるうちに、山本昌太の心の向きは少しずつ変わっていった。
一人のラグビー選手として、そして年齢を重ねた選手として。
「ずっと試合に出ていた選手が、あるタイミングで試合に出られなくなったときに『どういう態度で練習をするのか』を、若い選手たちは見ているんじゃないかなと思うようになりました」
試合に出る・出ないは関係ないのだ、と気が付いた。
322日ぶりのメンバー入りを果たした今節、出場すれば通算90キャップ目となる。
いまだからこそできるプレーを見せたい。
「試合メンバーから離れた経験、そのときに感じた思いを(乗せて)、チームのために思い切ってプレーしたいと思います」
ノンメンバーとこれほど長く時間をともにしたことも、これまではなかった。出場機会を得られずにいる若手選手たちから、大きな刺激を受けた2カ月。
いま、山本昌太は「チームのため」にジャージーを着る。
(原田友莉子)
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