チーム、監督に恵まれた西岡剛の活躍に期待=2011年米大リーグキャンプリポート Vol.3
想像より高い西岡への期待
3月6日、オリオールズとのオープン戦で適時三塁打を放ち、チームメートとハイタッチを交わす西岡 【写真は共同】
有力な移籍選手が西岡剛以外にいないという理由もあるかもしれないが、それよりもスタンドのファンが、ツインズのチームカラーに合った選手であるということを敏感に感じ取っているからではないか。背番号「1」はそれほど違和感なくチームに溶け込んでいる。
「野球というスポーツをリスペクトして、基本に忠実なプレーをすることこそが、ツインズ・ウェイ(ツインズのやり方)であり、このチームを強くしている秘訣(ひけつ)だ」と言うロン・ガーデンハイアー監督。今季地区3連覇を狙い、ポストシーズン12連敗にストップをかけ、1991年以来の世界一を目指すツインズ。西岡はその役割の一端を担う主力のひとりとして熱い視線を浴びている――。
「ニシ(西岡の呼び名)は素晴らしい才能の持ち主だが、私が何よりも気に入っているのは彼から感じる野球に対する情熱だ」と、ガーデンハイアー監督は語る。
「今年の目標は全力でプレーすることです」と、初々しい新人のようにいっていた西岡のエネルギーが、すでにスプリングトレーニングの時点で十分に伝わっている。実際、オープン戦での目立たないカバーリングひとつとっても、彼の動きは実にハツラツとしている。
往年の名選手たちがキャンプで指導
「打撃面に関していえば、(ジョー・)マウアー、(ジャスティン・)モアノーというリーグを代表する強打者がいるけれど、基本的にはつなげて点をとるのがスタイル。新球場はホームランが出にくいので、もっと足を使う機動力野球をやりたい。そのためにはニシのスピードがどうしても必要だ」
スプリングトレーニングでは、その言葉を証明するように、ベースランニングやヒットエンドランの練習に時間が割かれた。
そして、その同じグラウンドに、ツインズの宝のような存在である3人の人物がユニホーム姿で立っていた。まず、ツインズで7回の首位打者に輝き、安打製造機といわれたロッド・カルー。次に、現役最後の3年間を故郷ミネソタでプレーし、通算3000本安打と500盗塁を達成したポール・モリター。そして、87年と91年に世界一の座に導いた名監督トム・ケリー。この3人が特別インストラクターとして、選手たちに直接指導を行っている。有力OBがこうした肩書でスプリングトレーニングに参加することは他球団でも珍しいことではないが、選手との距離が近いという点においてはツインズほどの球団はないかもしれない。
ガーデンハイアー監督は、次のように語る。
「ファミリー色が強いというのもウチの特徴であり、強みだと思う。例えば、球団フロントにしてもGMは組織内からの昇格だし、監督にしても私がそうであるようにコーチからの昇格。チーム作りにしても、ドラフトで獲得した選手たちを育成することが基本だ。そうやってきたからこそ、安定した力を発揮できるのだと思う」
監督は球界でも折り紙つきの人柄
「いやぁ、なかなか難しいよ。問題は記憶力が落ちていることだな」と、ガーディーというニックネームで呼ばれる53歳の監督は人のよさそうな笑みを浮かべていう。
単なるポーズではない。ガーディーの人柄のよさは球界でも折り紙つきだ。私事で恐縮だが、私がメジャーの取材を本格的に始めて間もないころ、初めてクラブハウスで声をかけてくれたメジャーリーガーというのが、実はこのガーデンハイアー監督なのだ。83年、彼がメッツにいたころのことだ。内心ドキドキしながらクラブハウスに出入りしていた私にとって、どれほど救いになったことだろう。コーチ時代の彼にそんな話をしたこともあった。現役当時から、最優秀監督に選ばれるほどの監督になった現在も変わることない人柄だ。
西岡は良いチームに入り、良いボスにめぐり合ったように思える。あとはメジャー流野球への適応力。11年、ツインズのキープレーヤーとしてどんな活躍をみせてくれるのか、実に楽しみである。
<了>
- 前へ
- 1
- 次へ
1/1ページ