王者ジャイアンツ、2連覇へぬかりなし=2011年米大リーグキャンプリポート Vol.1
下馬評を覆す力を見せるジャイアンツ
無駄のない練習だが雰囲気は明るく、リンスカム(中央)、デローサ(左)らに笑顔も 【Getty Images】
ワールドシリーズ2連覇を目指すジャイアンツのキャンプはその典型的な例かもしれない。ナショナルリーグの下馬評はクリフ・リーを獲得したフィリーズが圧倒的に高く、ジャイアンツを推す声はほとんど聞かれない。確かに、ナ・リーグ所属チームのワールドシリーズ2連覇は75年、76年のレッズ以来記録されていない偉業である。しかし、だからといってジャイアンツの可能性が限りなくゼロに近いというわけではない。実際、その練習ぶりを目の当たりにしたり、選手たちと接してみると、このチームには下馬評を跳ね除けるだけのものが十分に備わっているように感じられるのだ――。
芸術的でさえある練習風景
しかし、フィールドに出ると一変する。突如として、物言わぬ集団と化す。無駄口が一切ない。練習は黙々と続けられる。球場にはBGMもかからず、ノッカーの打球音が響き、指示を出すコーチの声が時折聞こえるだけだ。
練習は2面のフィールド、室内のバッティング練習場、ブルペン、サブグラウンドで行われ、常にフル稼働している。メーン球場で行われた守備練習では3人のコーチが内野手相手にノックバットを握り、レフトでもノッカーがフライを打ち上げ、ライトにも捕球練習用のマシンが設置され、外野手がフライを追っている。それが同時に進行している。フィールドでユニホームを着ている全ての選手、コーチが動き回っている効率性の高い練習風景は、芸術的な美さえ感じさせた。
サブグラウンドでは、投手陣のバント練習が入念に行われていた。マシンの脇でコーチが1球1球アドバイスを送る。5人一組のグループで抜群のセンスを見せていたのは、エースのティム・リンスカムだった。打球を殺し、一塁側、三塁側のほとんど同じ場所に転がしてみせる。まるで、マジック・ショー。
「手堅い野球」を実践するジャイアンツらしい全体練習は見事な流れの中で、約3時間で終わる。その後は個人の判断に委ねられ、居残りで打ち込みをする選手もいれば、ウェートトレーニングに汗を流す選手もいる。
ポージーら主力選手に緩みは見られず
若いころのジーターをほうふつさせる新人王のポージー 【Getty Images】
「ここにはエネルギーがみなぎり、チームを盛り上げるキャラクターがたくさんそろっている。楽しんで勝つということができるチームだと思う」
その落ち着いた口調からは、とても23歳という年齢をイメージできない。捕手というポジションのせいもあるが、すでにチームリーダーの風格さえ漂う。昨年から感じていたことだが、彼の言動はデレク・ジーター(ヤンキース)のデビューした頃によく似ている。というより、ポジションこそ違うが、再来という言葉を使いたくなる。
「2連覇を狙うチームにとって必要なことは、長い道のりの中で起こることに一喜一憂せずに、目の前の1試合1試合をしっかり戦うことだ」
このポージーの他にも、フレディ・サンチェスら主力にも話を聞いたが、昨年の優勝による緩みは感じられなかった。
ジャイアンツはこのオフ、ミゲール・テハダ以外の目立った補強はなかった。しかし、昨年故障でほとんどシーズンを棒に振ったスーパーユーティリティーのマーク・デローサの復帰が見込まれるなど、明るい材料もそろっている。メジャートップのチーム防御率をマークした強力投手陣に疲れの不安がなくはないが、引き締まったスプリングトレーニングを見る限り、ワールドシリーズ2連覇も決して夢ではないと思えてきた。
<了>
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